白央篤司の独酌ときどき自炊日記Ⅱ

フードライター、コラムニスト。暮らしと食をテーマに執筆しています。

瀬戸内の旅・1日目 尾道~倉敷。『東京物語』のあの寺へ

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尾道に行ってきました! 久々の広島県です。

翌22日に、倉敷の絵本店さんがイベントに招聘してくださったんですよ。その前乗りで一泊したのですが、せっかくの機会なので尾道に足をのばしました。

 

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尾道、初探訪です。倉敷からJR山陽本線に乗って、約1時間という距離。

潮風が気持ちよく、汗ばむような陽気でしたよ。上着を脱いで、しばしまち散歩。

 

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まず、こちらのかまぼこ店の外観にやられました。

 

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いい風情だ……。

そして店内にはキャスリーン・バトルの歌う『オンブラマイフ』が流れていました。あれはラジオだったのか、それともご店主の趣味なのか…。このあとすぐ他のお客さんがいらしたので、お聞きできなかったのが残念!

※撮影はご主人の許可を得ています。ほかの写真もすべて同様。

 

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なんとも味のあるお品書き。柿天は柿の形をしてるから、だそうですよ。

 

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シンプルなすり身揚げと、玉ネギ天を購入。ホテルで晩酌のアテにしましたが、素朴で飾り気のない味わいだったなあ。じっくり噛んで、素材の味を楽しみました。

 

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商店街にあるスーパー、鶴屋さん。いかにも「まちのスーパー」という感じで、おそうざいも充実。あったかい感じのするお店でしたよ。以下、感想メモ。

  • 尾道ラーメン用の麵とスープセット、5人前で1183円
  • イシモチは「グチ」、カサゴは「ホゴ」と呼ばれる
  • やっぱり瀬戸内でタイは日常魚。焼かれたタイが1匹250円でさらに半額シールが。頭から尾の付け根まで25㎝はありました。
  • キスもよく食べるよう
  • メダカガレイはじめ、小~中程度の大きさカレイが豊富
  • 赤シタビラメ、ここでは「げんちょう」とクレジット
  • お総菜コーナーにやっぱりお好み焼きが売ってる 

 さて、鶴屋さんを後にして商店街を駅のほうに戻ると…

 

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野菜や果物、おそうざいが並ぶお店が。その中に…

 

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ばら寿司がありました! 

ばら寿司、私の解釈では「具材をまぜこんだ寿司めしの上に、各種調理がなされた具材をのせた料理」です。岡山ばら寿司が有名ですが、瀬戸内の各地で食べられてますね。

 

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煮ダコもいっぱい。

ああ、腹が減ってきました。ちょうど13時すぎぐらいです。

 

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この通りに差しかかったとき、そそられる匂いがしたんですよ。腹ペコを惹きつける香りはどこから??

 

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ここでした、『拉麺 またたび』

実はこちらのお店、知人で人形作家のMAZTOさんが「尾道に行くならゼヒ」とおすすめしてくれてたんです。ふらふら歩いててたどり着くとは奇遇な。よーし、お昼はここにしよう。

 

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店内はカウンターのみ、8席だったかな。若い男性のご主人がひとりでやられているようです。

 

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こういうときはベーシックが一番。「らーめん 」(650円)を注文しました。

 

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ああ、きれいですねえ。

細くてしなやかな麺と、うま味たっぷり醤油スープ。チャーシューが実においしい。メニュー構成的にも『はるばる亭』のご出身なのかなあ。ワンタンも頼めばよかった。

 

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店頭には日本酒のボトルが並んでいます。好みの銘柄があるのでうれしくなり、「夜はつまんで飲んでもOKなんですか?」と尋ねたら、「お昼からも飲めますよ」とご店主。「飲みますか?」と笑顔で訊いてくださったんですが…こらえました。明日のイベントが無事に終わるまでは、控えたかったんです。ぜひ、次回!

ごちそうさまでした。

 

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お店を出るとこんな景色。

 

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床屋さんをのぞく猫。何が気になってるのかな。

 

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この感じ、見惚れました。印象派の絵の夕焼けのような。

 

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ものすごく惹かれた通り。夜はどんな表情だろう。小津映画の中の桜むつ子さんや、賀原夏子さんがひょいと現れそうな。

さて、私が尾道に来たかったのは小津安二郎監督ゆかりの地を訪ねたかったからなんです。尾道は、昭和28年の映画『東京物語』のロケ地になったところでした。

 

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それは浄土寺というお寺です。ここが、その入り口。

 

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入って右手すぐに、この光景が見えました。

ああ…ここだ。

ここなんだなあ。

 

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多分、ここだ。

写真でしか知らないけれど、ここにあの人が立っていたんだな。

 

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小津安二郎 新発見』(松竹編 講談社+α文庫)より

原節子さんと小津監督が67年ぐらい前に、ここに立っていたんですね。

そう思うと、胸が熱くなりました。

ちなみにこの『小津安二郎 新発見』、めずらしい写真がいっぱい。スナップが多く、小津映画ファンとしてはうれしい一冊でしたよ。

 

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そしてこの灯篭が、

 

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これなわけです。

 

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灯篭の裏手あたり。昔はこの白壁がなく、灯篭の位置も違ったんだそう。お守り売り場のかたがいろいろと教えてくれました。

 

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浄土寺の牡丹は今が盛り。あでやかでした。

来られてよかったです。またいつか、来られますように。

 

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右側の家々、『東京物語』の中だとすべて瓦屋根なんですよね。

どのあたりが撮影ポイントだったんだろうなあ。

そんなことを考えつつ尾道をぶらぶらするのは、なんともいえずいいものでした。

いま、家に帰って『東京物語』を見返しています。

 

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山陽本線脇にたくさん生えていた花。

オオツルボというそうです。ツイッターで教えてもらいました。教えてくださったkmさん、chouxさん、ありがとうございます。

 

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尾道にはロープウェイがあって、この見晴らしの高さまで3分で行けました。

正式名称は千光寺山ロープウェイというそうです。

この位置から右方向を向くと…

 

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こんな眺望に。小津さんたちはここまで来たかな?

さて、帰りはテクテク歩きます。「ロープウェイで上に登って、帰りは歩いてくるのも楽しいですよ」と先の『拉麺またたび』のご主人におすすめいただいたのでした。

 

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途中で出会ったネコ。いい目つきですねえ。表情はクールですが、カメラを近づけても逃げずに悠然と構えてくれました。

 

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帰りの坂道。ちょっと腰かけて、ひと休み。

 

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尾道、短時間でしたが堪能しました。さて、そろそろ倉敷へ向かわなければ。

 

倉敷、第1日目

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また山陽本線に乗って約1時間、倉敷駅に着きました。

 

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目の前はこんな感じの風景。歩いて6分ぐらいだったかな、今宵のホテル『ド―ミーイン』に向かいます。ドーミーはビジネスホテルでもお風呂が立派で、うれしいですね。ひとっ風呂浴びてスッキリしてから倉敷名物・美観地区をうろついたのですが、今回は夜の食事だけメモしておきたいと思います。

 

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お招きいただいた『つづきの絵本屋』さんに歓待していただきました。場所はこちら『創味魚菜 いわ倉』にて。金曜の夜、とてもにぎわっていましたよ。人気店なんですね。

 

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 突き出しは小ダコの煮たの。タコも瀬戸内らしい食材です。ちなみに松山のデパ地下では、生きた手長ダコが売られていました。

 

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 豆腐とタケノコ、そしてゲタの煮つけ

ゲタは、岡山でよく食べられる魚のひとつで、シタビラメのことです。シタビラメというと、40代以上の人はクラシック・フレンチの食材と思われるでしょうが、岡山の海側では本当に一般的な魚です。有明のほうだとクツゾコって呼ぶんですよ。英語だとソールなので、まったく同じ。しかしシタビラメ、ゲタに見えるかなあ(笑)?

 

ちょっと分からないのが、赤シタビラメを「ゲタ」として指すことが多いように感じるんですね。クロウシノシタ、イヌノシタなどのシタビラメ類すべてを「ゲタ」と指すのだろうか? 今後の課題として調べてみます。

シタビラメといってもヒラメの仲間ではなく、カレイ目ウシノシタ科なのですね。

長々書きましたが、ゲタの煮つけはうまかったです!

 

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 岡山名物、三点盛り。

シャコ、ママカリ、黄ニラの酢の物です。岡山人はシャコをよーく食べますねえ。「春になると塩ゆでしたのをたっぷり食べます」という声はよく聞かれます。こちらの海側の人はシャコの殻むきが得意な人、多いんですよ。

今回の旅ではスーパーを何軒も周りましたが、ゆでシャコや生シャコも見かけました。

 

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 アナジャコの揚げたの。アナジャコは倉敷の玉島というところでよく獲れるようです。殻がやわらかくて、香ばしくて実にうまい。関東では知られていない食材のひとつですね。アナジャコに関しては以前にこんな記事を作りました。

野食家の茸本朗さんに、アナジャコ釣りをレクチャーしてもらいました。

揚げてスイートチリソースにつけると絶品なんですよ!

 

さて、これ以外にもいろいろとご馳走になり、最後はタコめしでシメました。

「つづきの絵本屋」の都築さん、どうもご馳走さまでした。ありがとうございました!

 

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明日はいよいよイベントです。

ドキドキするなあ…と思いつつ、最後に近所のコンビ二でビールを1本購入。倉敷の地ビール『独歩』、コク深くて香りがよくて、おいしかったです。

倉敷で買ってきたガラエビの揚げたの、ビールの最高のつまみでした。

さあ、初日の記録はここまで。

明日につづく。