白央篤司の独酌ときどき自炊日記Ⅱ

フードライター。郷土の食、栄養、暮らしと食をテーマに執筆しています。連絡先→hakuoatushi416@gmail.com 著書に『自炊力』『にっぽんのおにぎり』(理論社)、『ジャパめし。』(集英社)など。メシ通『栄養と料理』『ホットペッパー』などで執筆中。

レモンパイはいつ頃流行し、いつ頃からマイナーになったのか?

f:id:hakuoatsushi:20180426221601j:plain

レモンパイは郷愁の味。

土屋遊さんのレモンパイの記事を読んでいたら、食べたくてたまらなくなった。

しかし最近ではレモンパイを買える店も少ない。レモンパイとはとはいつごろ流行し、いつごろからマイナーなものとなっていったのだろう?

私の場合は昔、宮城県多賀城にある『ファソン・ドゥ・ドイ』のレモンパイを食べる機会があっていっぺんで好きになった。1985年ぐらいのこと。

ああ……食べたやな、レモンパイ。

 

昨夜ふと色川武大さんのコラム集『喰いたい放題』が気に留まって、読み返していたらタイミングよく出てきた。

「近頃なぜか、レモンパイというやつをあまり見かけなくなったな」(光文社文庫 P.189)とある。
初単行本化が1984年のようだから、つまり昭和59年。連載はその前年だろうか。私の記憶では1985年(昭和60年)ぐらいにはもう「よく見かける」ものではなかったような。売られていたのは覚えているが、どこの店でも定番とは言えなかったような……ああ、記憶はおぼろげになるばかり。

 

チーズケーキブームに押された説

そんなことをつらつらツイッターに上げていたら、佐々木浩久監督が「80年頃のレアチーズケーキの出現が影響したとかですかね」とリプをくださった。たしかに色川さんも先の本で「チーズケーキにすっかり押されてしまった」と書いてある。

どういう関係性なのだろう?

ちなみに中目黒のチーズケーキ専門店『ヨハン』の創業が1978年、先月惜しまれつつ閉店した中野『シュン』も同じく1978年の創業。この頃からチーズケーキが人気になって80年代後半ぐらいまでに“駆逐”されてしまったのか? 

などと考えていたら、丙ウマ・サーマンさんが

 と、さすがの考察。

 こういう気運があって、「レモンパイはまあ、いいか」と当時のパティシエ達が判断した、そこのところを調査してみたい。

だいたい50年前に現役だったケーキ職人さん、探さなければ。

 

フェイスブックからは、スープ作家の有賀薫さんが情報をくださった。

私の手元に、中央公論社の暮らしの設計シリーズ『洋菓子の研究』というムックがあります。昭和54(1979)年刊。
トップ記事はやはりチーズケーキ。日本でチーズケーキブームが始まったのはこの前後です。当時最先端のパティスリーであった、ルコント、青山クドウ、自由が丘とろーニャ、キャンティ紀伊國屋などのチーズケーキがレシピ付きで紹介されていました。
同じ号にクドウのレモンパイとその作り方か紹介されていて、自分の記憶でもこの頃レモンパイは普通に店にあった気がしますし、80年ごろもまだまだありました。

なるほど。

 

昭和40年代には定番という意見続々

さらにはツイッターのほうから「昭和45年発行、河野貞子さんの『ホームメードのお菓子』(鎌倉書房)に載っています」「都内ですが、昭和40年代前半にはまちのお菓子屋さんで一般的なものだったと思います」というコメントもいただけた。

 「ジャーマンベーカリーによくありましたよ」という声は数人の方からいただきました。この『ジャーマンベーカリー』って有名なお店だったようですが、私は分からない。いつごろ閉店したものか? 検索したら金沢に同名のお店があり。関係あるか調べてみよう。

 

さらには、こんなコメントも。

 カナダ在住のかたからのご意見です。

 

エッセイストの青木るえかさんもリプをくださいました。

 さらに「当時、レモンパイというのは割とどこでもあって、『メレンゲが山盛りで激甘』『カスタード部分にちょっとレモンの香りがする程度』『パイ部分ガシガシ』でした」と続きます。昭和40年代というか1965~1974年。当時を知る人にはおなじみのものだったようですね。

現段階でいただいてる声で一番古いものは、都内のかたからの「昭和30年代後半にもあった」というもの。

情報をくださったみなさん、ありがとうございました。

 

今後、関係者にちょこちょこ取材してみます。まずは田原町に行ってみるかな。