いよいよイベント当日ですが、まずは倉敷・美観地区のことから。
私はかなりの朝型で、大体5時前後には起きてます。この日も早くに目が覚めたので、たっぷりと散歩を楽しみました。美観地区がまさにホテルの隣だったんですよ。
美観地区のメインストリート的な、倉敷川畔の朝風景。
橋の上で、しばしぼんやり。
実は昨日の夕方もこのエリア、来てみたんですね。しかしまだ人が多く雑然としていて、あまり風景を楽しめませんでした。
それが静かな朝の光の中では、印象が一転。言葉が出てこなかったなあ…。
朝の6時ごろ。風もなく水面にまちが映り込むその美しさ。
かつての倉敷の大地主、大原家の旧邸・有隣荘。特別公開中のようで、昨夕は観光客が2階の窓からもいっぱいでしたが、この静謐なる佇まいを見られてよかったです。
美観地区は1969年に保護区として定められたそう。普通に人も住んでいられるんですね。ジョギングやら、犬の散歩をされるご近所のかたと時折すれちがいました。
ちょっと粘って、この無人カットを撮影(笑)。
近くの豆腐店では、まさに仕込みの真っ最中でしたよ。
朝の美観地区、人は少ないかわりに空はにぎやかでした。風を切るように飛ぶツバメの多かったこと。今回の旅行中、何度ツバメを見かけたろうか。
思わずタテで撮りたくなった倉敷の一枚。
忘れられない朝の空です。
こんな「間(はざま)」が、実に表情豊か。
寶壽山・観龍寺の階段を上がったあたりで出会ったネコ。
わりに人恋しいようで、しばし一緒にいました。
「行かんといてーや」と言ってくれてると信じたい。またな。
味のある鐘楼だったなあ。このすぐそばでカタツムリ発見。
これ、すごいでしょう。「阿知の藤」という古木で、樹齢は300~500年と推測されるよう。花はまだまだでしたが、なんともありがたい気持ちになりました。
しばし、合掌。
阿知の藤の若葉。たくさんの花がつきますように。
本当に、空のきれいな朝でした。三文の得ですね。
ひときわ目立っていた花。
さあ、日がグングン高くなってきます。
日本家屋からのぞく西洋建築。おもしろいコントラストですね。
大原美術館です。昭和5年建築・日本初の西洋美術館で、先の大原家が設立したもの。明治13年生まれの大原孫三郎(まごさぶろう)は実業家でありながら、芸術支援・社会活動も熱心に行った志の人と伝わります。今回の倉敷行で彼に興味がわいてきました。
それはともかく、この美術館の前には…
白鳥が2羽いるんですよ。この2羽、けっこう前からいるようです。
堂々とした、大きな白鳥でした。
旅に出ると、「飲食店のメニュー採取」もよくやります。
どこかしらの「その地らしさ」が出るものですが、これは岡山の海側らしさがよく出てますね。サワラにアナゴ、シャコに手長タコ。生シャコは食べたことないなあ…。そして瀬戸内は小エビをガラエビと呼ぶのですね。
さて、そろそろ宿へ帰ろう。イベントの準備もしないとな。
倉敷・路地市庭
1時間ほど講演の下準備と練習をしてから、9時オープンのマーケット「路地市庭」(ろじいちば)を見に来ました。昨日の歓迎会で地元のかたに教えていただき、興味津々だったのです。(Oさん、ありがとうございました!)
毎週土曜日に開かれ、開催はもう300回を超えているとのこと。
「路地」とあるように、ちょっと開催場所が分かりにくかったんですが、スタッフのかたが表通りで「見ていきませんかー」と声をかけてくださり、助かりました。
入り口にお店を出されていた『(株)魚昌鮮魚』さん、岡山ならではの魚介&惣菜がたっぷり! 許可をいただけたので、あれこれ質問しつつ撮らせていただきましたよ。
売り場のお姉さん、写真が逆光になってスミマセン。。。
※日記内の写真はすべて許可を得て撮影しています
まずは岡山の海側の人々の大好物、サワラです。これはサワラのたたき。東日本だと、サワラを生で食べられる機会自体が少ないですよね。カツオのような個性的な味ではないのですが、やさしく穏やかなうま味があります。晴れの国の岡山人がこの魚を愛するの、なんとなく分かるんだよなあ。
サワラ、他にもたくさんの料理に使われます。
煮つけ用のサワラのアラ。
ソテー用にハーブとオリーブオイルでマリネされたもの。ああ、買って焼いてみたかった!
こんな創作おかずもありました。
実際に買って食べてみましたが、うまかったですよー。淡泊ですが、揚げることで香ばしさが増して、いいもんですね。
ちなみに、これは美観地区外 で採取したある居酒屋さんのメニュー。
「何はおいてもトップにサワラ!」を明記するところに心意気を感じました。「サワラ置いてます」というのをハッキリ示すメニュー、他にもたくさん見かけましたよ。
今回は、岡山南部の人とサワラの結びつきを考える良い材料がたくさん得られました。
さて話は戻って、『魚昌』さんの売り場から。こちらは「ヒラ」というニシンの仲間の魚です。小骨が多いので骨切りされてます。 岡山ならではのもののよう。
煮物用のヒラのぶつ切り。今度倉敷に来るときはキッチン付きの宿泊所探そう。料理してみたくなる食材が多すぎました!
いろいろ教えてくださった『魚昌』さんにあらためて、感謝です。
この路地市庭、買ったものを食べられるところがあるのがいいですね。郷土の魚介ばかりを紹介しましたが、パンやピッツア、タコスにスイーツなど、売られているものはバラエティに富んでいます。ご興味あるかたはぜひ、公式ブログをのぞいてみてくださいな。
私が訪ねた日の出店リストも載っています。後日「レンコンコロッケがうまいんよ」と地元のかたから情報が。よし、次回ぜひ!
きょうのお昼用に、先のサワラのシソ揚げと、『寿司一本店』の出店で岡山ばら寿司を買いました。それがこちらです。
ふふふ、うまそうでしょう!
サワラの酢じめ、酢バス、ゆがいて味つけされたニンジンにシイタケ、タケノコに菜の花、モガイ(サルボウガイ)、アナゴにママカリ(サッパというニシンの仲間の魚を甘酢漬けにしたもの)が載っています。
これ、味つけがそれぞれ絶品でした。うまかったなあ。駅でもこういうのを売ってほしい…としみじみ。確か700円ぐらいだったような。安いですよ。すばらしい。
モガイについても売り場のかたにいろいろ教えてもらいました。
『寿司一本店』さんはサバずしも良さそうでした…ああ、買わなかったことを後悔。
今度また、買いに行きます。
木本戎堂
美観地区を歩いていてすごーく気になった、老舗和菓子店。
倉敷の名物菓子に「むらすずめ」というのがあるんですね。あんこを薄皮の生地でふんわりと包んだものですが、中身はつぶあん限定なのかな?
「村雀」「むらすずめ」「むらすゞめ」など表記を変えつつ、数社でつくられています。こういうの、伝統食品ではよくありますね。
さて、戎堂さんのショーケースに並ぶそれがねえ、どうにも存在感があったんですよ。
通り過ぎることができませんでした。
いやー、おいしかったです!
手づくりの実直な味わい。正直、今までこのお菓子…そんなにピンと来ませんでした。でも、これは違いました。このまま帰る予定だったら、間違いなく家人のおみやげにしたなあ。ご主人も撮影を快く許してくださり、感謝です。
そしてこの姿、きものなどでもよく見かける伝統柄の「ふくら雀」をきちんと想起させますね。かわいらしいものだ。
店内がまた、趣があって素敵なんですよ。ぜひ倉敷旅行の際には行ってみてください。
このすぐ近くにある『アチブランチ』という雑貨店がまたすばらしいセレクトで、食器類などをつい買ってしまったのですが…そのことはまた別に。
さあ、イベント会場に向かいましょう。そろそろ時間です。
つづきの絵本屋
今回のイベント会場『つづきの絵本屋』さん。
JR倉敷駅から徒歩8分。今月の15日にちょうど一周年をむかえられました。
ご店主の、都築照代(つづきてるよ)さん。
ずっと図書館司書をつとめられ、「いつか本屋さんを開きたい」という夢をかなえられました。私の『にっぽんのおにぎり』の最初のトークイベントにご来場くださり、同様の企画をご自身のお店でも開きたい、と思ってくださったそうです。
明るい店内で絵本に囲まれつつ、講演中。
具体的には、こんなお話をしました。
<まずは自己紹介>
・フードライターってこんな仕事
<郷土料理にハマったきっかけ>
・2年半調べた各地のローカルフード
とある雑誌の企画で、47都道府県の郷土ごはんのレシピを考え続けた日々
<最初の本ができるまで>
・『にっぽんのおにぎり』のコンセプト
「一県をひとつのおにぎりで表すとしたら?」
<郷土料理の今とこれから>
・書き上げて見えた、おにぎりと具の関係
多くの具材に共通することとは?
・炊き込みごはんの意味、今と昔
今は日々のごはんに変化をつけて楽しむもの。昔は…?
・食べつなぐということ
おにぎりの「化石」に込められた思いとは
今回は、途中でおにぎり2個の実食タイムもありました。
スタッフのみなさんがにぎってくれた天むす、おいしそうでしょう。
(^ω^)
ご参加いただいた皆様からも、逆にたくさん岡山食のことを教えていただきました。心よりお礼申し上げます。皆さん、終わってから本をたくさん買ってくださって、感激でした。
最後にスタッフのみなさん、最後まで残ってくださったお客さまお二人と記念写真。
温かく迎えていただき、支えていただき、ありがとうございました。
イベントを追えて私、ホッとした顔してますな…。
<メモ>
今回の旅とトークイベントを通じて、いろいろなことがクリアに見えた気がします。
私は「郷土料理そのもの」よりも、「郷土料理と現代がどんな形でリンクしているか」に興味があるんだな。
郷土になじんだ食べ物って、当事者は気づかないもの。
当たり前のように目にして、口にしてるものだから、誰かに指摘されないと「よそにはないもの」と気づけない。
日常の食の中に溶け込んでいる、郷土らしい食べもの。
形骸化されてしまって、「郷土名物」として利用されている食べもの。
他地方の人々は、そこを混同してしまう。
本当の郷土めしは、ざっくりとした共通点があって、個々の家によって細かい部分がかなり違うものです。
他地方の文化に興味がある人ほど、自分の地域の郷土性、特異性に気づきやすい。
やっぱり、他者を知ることは自身を知ることなんですね。