九州の旅二日目、鹿児島の朝。朝日を背にした桜島を前にして、なんというか……思わず手を合わせてしまいました。おのずと湧きおこった「ありがたい」という気持ち。うん、きれいだった。雄大だったな。ありがたかった。
ふと、昨日タクシーの運転手さんと話したことを思い出す。
「桜島はそりゃきれいだけど、どか灰が降るとそりゃあもう大変なんだよ。ここ数年はそんなことないんだけど、またいつ降ることやら」
どか灰、という表現に鹿児島を感じる。「ひどいときは歩くのも困難だからねえ」とちょっと二谷英明を燻して丸めたような感じの運転手さんは言った。
さて、宿は城山ホテル鹿児島を取りました。以前は城山観光ホテルといったようですね。とにかくいろんなかたから「鹿児島市内に泊まるなら城山にしなさい」とすすめていただいたのです。ライターの友人の「朝食のビュッフェが有名なんだけど、郷土料理もふんだんに出るから、ぜひに」という言葉が決め手となりました。
さっそくその朝食へ。
おお、さつま揚げが今まさに揚げられている! 低温でじっくり揚げるんですね。しばし見入りました。
昨日の日記でも登場した「とんこつ」です。城山さんも味噌味だったな。係員のかた数名にうかがったんですが、「うちの味つけは醤油だった」というひとが3名、「いや味噌でした」というひとが2名。
作られているものですねえ。
揚げたてのさつま揚げを全種、とんこつにきびなごの木の芽焼き、サワラの味噌漬け、鹿児島黒豚コロッケ、豚味噌(豚ひき肉と味噌を甘辛く合わせたもの、これまた鹿児島名物)などをいただきました。
鯛茶漬けがね、うまかったんだ……城山ホテル名物だそうです。朝からなんとも贅沢な気持ちに。鹿児島産の真鯛を朝じめして刺身にし、アラでだしをひいているとのこと。
和食もよかったですが、洋食もまた凝ってましたねえ。スズキだったか、大きなパイ包み焼きが出てきたのにはびっくり(上の写真)。つけあわせのジャガイモがまたおいしかったんですよ、朝からワイン欲しくなってしまう。
用意されているメニューは80種以上とのこと。
忘れがたいのがタンカンのジャム、柑橘の一種でこちらも鹿児島特産。濃厚で香り高く、際立つ甘みと苦み。もう一度食べたいと、今書きつつ強く思っています。
朝、あれこれ何を取ろうか迷いつつ自然に鹿児島の名物に触れられるのはいいですね。おいしければ好感も増すわけだし。城山ホテルに泊まる際は、前日あまり食べ過ぎないのが得策だなと思いました(笑)。朝、胃もたれしてたらもったいない。
ホテルの片隅に置かれていた盆栽の花々。ひそやかで、実に綺麗だった。
桜島をのぞむ展望風呂にもう一度入って、早めにチェックアウト。連休明けの平日、私は1泊12,000円で泊まりました。
お世話になりました。
ちょっと海のほうに来ましてですね、
いおワールドかごしま水族館に寄りました。
鹿児島周辺に生息する魚類をコンパクトにギュッと見ることができて、とてもよかった。ミノカサゴがねえ、うつくしくてフォトジェニックでねえ、ちょっとおじさんエキサイト。いやーー何枚も撮っちゃいました。
この2匹の連舞乱舞(つれまい・みだれまい)が実に見事だった! 素敵なダンスショーだったなあ、蝶の道行ならぬミノカサゴの道行。「うわあ!」とか本当に声だしつつシャッターを切り続けました。周囲にいた子ども、かなり引いていたと思います。
あと、ウミウシの展示も充実。なんと不思議ないきものだろう。名前がいいんです、その名もコンペイトウウミウシ。時間を気にせず居続けたかった……。
しかしこうもしていられない、お昼までには熊本に着きたいのだ。
鹿児島駅にて。
「つけ揚げ」がさつま揚げの地元の呼び方。ごぼ天は九州で人気ですねえ。そして朝も食べた「とんこつ」がうどんにも。
「とんこつ」、県外のひとには分かりにくいからか表記が「黒豚の軟骨煮」に。
ともかくも九州新幹線に乗って、
駅構内には名物・辛子レンコンの専門店が。サイズもいろいろ、このあと見て回りますがスーパーでもやっぱり置いてあるものですね。焼酎のアテにいいんですよ。レンコンに辛子を詰めて、薄い衣をつけて揚げたもの。
ちくわの中にポテサラを詰めて揚げた「ちくわサラダ」、駅でも売られていました。私、これ知らなかったんですよ。あとでツイッターで訊いたら、
「熊本県内では有名な、ヒライというお弁当屋さんがはじめたもののようです」と、県人のかたが教えてくれました。ありがとうございます。
これは九州限定品かな。
熊本駅舎。
ああ、快晴もいいとこでした! まさに五月晴れ、さわやかな風が吹いていましたよ。
川沿いを歩いて市街地を目指します。白川という川だそうな。
あちこちにあった木。薄紫色の小さな花がこぼれんばかりに咲いている。
ツイッターから教えていただいたんですが、栴檀(せんだん)の木というそうです。『枕草子』にも登場するのだとか。
集合知のありがたさ、感謝です。
路面電車に「がんばろう! くまもと」の文字が。
だんだんと中心部に近づいてきました。家々の間に川が流れて、いい風情。
練りもの屋さんを発見。
辛子レンコンに魚ロッケ(魚のすり身のフライ)の文字。そしてゴボウが人気だなあ。
近くには名物、いきなり団子のお店もありました。小麦粉を練った生地でサツマイモとあんこ包み、蒸したもの。最近は他県でも似たようなお菓子を作ってますね。「昔はあんこは入らなかった」とも、よく熊本のかたから聞きます。
いきなりパン!
近くには魚屋さんも。あ、きびなごだ。夜に繁華街でいろんなところ周りましたが、熊本でもよく食べられているのですね。
こちらはスーパーの棚から。
熊本に来たなあ。
太平燕(タイピーエン)、具だくさんの春雨スープです。「町中華には必ずあるよ」「スープの味も店によって千差万別だね」などなど、いろいろ今回ヒアリングできました。ホテルの朝食バイキングでも置かれてたな。
南関(なんかん)あげも熊本名物のひとつ。豆腐を5㎜ぐらいに薄く切ってからプレスし、揚げたもの。味噌汁に入れるの、定番ですね。お湯をかけて湿らせ、巻きずしにすることもあるそうですよ。関東でもたまにスーパーで見かける。
お米売り場、その土地らしさが出るスポットです。『森のくまさん』は熊本を代表するお米、ヒノヒカリとコシヒカリが親。名前がいいよね。
「あんたがたどこさ」って唄、ありますよね。
「あんたがたどこさ、肥後さ、肥後どこさ、熊本さ、熊本どこさ、せんばさ、せんば山には狸がおってさ……」
その「せんば」がここ、と言われてるんですかね。熊本市電「洗馬橋」停車場のとなりに狸像がありました。
すぐ近くの郵便局のポストにも。
船場橋、だけど停車場は洗馬橋……ここがちょっと謎でしたが、また別に調べてみます。
船場橋からの眺め。
『あんたがたどこさ』、正しくは『肥後手まり唄』というのだそう。
橋の飾りにまりつき少女。
市街地にあった馬肉専門店で撮らせていただきました。馬肉コロッケや馬生ハムまでも! いろいろ教えてくださったご主人に感謝です。
飲食店では馬肉を置いてるお店、多かったですねえ。「安いもんじゃないから、あまり食べないよ」という人あり、「元気つけたいときに食べるね」「うちはお正月とか人が集まるときに買って家で食べてた」なんて声も聞けました。
お総菜売り場に馬モツ煮込みがあるの、いいですねえ。居酒屋さんの品書きにもよく登場していたな。
右にたくさん並んでいるの、馬モツ煮込みのレトルトです。ひとつおみやげに買ってきましたよ。
馬肉の部位もいろいろ。ああ……調理してみたい。
チェーンのうどん店、馬肉入りうどんが1番人気。玉子とじでおつまみにもなっていますね。馬肉入りうどんは山梨のほうもやるなあ、 駅の立ち食いそばでも見かけます。
修復中の熊本城を街中より。
熊本ではこの時期ポピュラーなんですね、知らなかったなあ…! 「シャク」とはアナジャコのこと。香ばしくておいしいんだ。脳ミソ、ホヤのような香りがします。
とある居酒屋さんでは天ぷらになってました。ちょっと高級品かな。
路面電車のデザインもいろいろあるんですね! カッコよくて、思わず一枚。
お昼はラーメン、 駕町通りを歩いてて気になった『北熊(ほくゆう)総本店離れ』にて。
鶏ガラと野菜でとったクリーミーなスープに焦がしネギがアクセント。ルックスはかなりのこってり感ですが、意外なほど食べやすい。もっちり中太麺も好みでした。店員さんもみなさん親しみやすく、いい昼食になりましたよ。
ごちそうさまでした。
この近くにあった『ボンボリ』というお店もすごく気になったんですが、今回はうかがえず。次回のたのしみにします。
お総菜売り場には名物「だご汁」も。九州各地で食べられてますね。小麦粉を練った生地を具にして、いろんな野菜類と一緒に味噌で煮たもの。
レトルトでもあるのは現代に生きる郷土料理の証拠ですな。
さて、歩き回ってるうちに日も暮れてきて、飲み屋さんが開きだしましたよ。1軒目は『民芸酒房 肥後路』へ。熊本出張も多いH君が教えてくれた店。
「ひともじぐるぐる」、真っ先にお願いしました! 楽しい名前ですよねえ、ゆがいた細ネギをぐるぐると白根の部分に巻きつけて、酢味噌でいただく郷土料理。ひともじ、がネギのことなのだそう。
『美味しんぼ』にも出てきましたよね。熊本出身の政治家の好物、という設定で。
こちらのお店、民芸酒場とうたうだけあって民芸品にあふれて雰囲気がいいのですよ。あれこれ眺めつつ、カウンターでぼんやり。そして板前さんの仕事を拝見しつつの、良い時間が過ごせました。
名物という特製のがんもどき、優しい味わいで体がホッとする……丁寧な仕事をいただく愉しみ、満喫。
このしろのお造り。あしらいも素敵ですねえ……。このしろ、スーパーの鮮魚コーナーなどでもよく見かけました。熊本ではよく食べられるんだな。
お醤油さしがまたいいんだ。
もっとじっくりここでやりたかったけれど、やっぱりいろいろ周りたい。お会計してもらいました。まだ外は明るいな、これからだ。
中央区城東町、並木通りにいた猫。
ちょっと険しい表情にも見えますが、めちゃくちゃ人懐こいやつでしたね。みゃあみゃあ言いながらこっちに近づいてくる。なでさせてもらいました。
達者でな。
あ、並木通りにある『汽水社』という古書店が品揃えも雰囲気もすごく好みでした。いい古本屋さんがあるまちは、いいまちだ。古本好きはぜひ寄ってみてください。
熊本にいるんだなあ、私は。
いきなりですが、熊本ワインです。
2軒目は『ワイン食堂 トキワ』というお店を訪ねました。日本全国食べまわっている友人のYさんがおすすめしてくれた店。
圧巻のおつまみ盛り合わせ……! タコと柑橘のサラダ、自家製ツナのトマトの和え物、ポテサラに蒸し鶏など、どれも穏やかな味つけながら香りと食感がよくてワインがすすみました。
開店したばかりで客はまだ私ひとり、カウンターに座ってシェフにいろいろとお話をうかがえたの、嬉しかったなあ。熊本の食材のこと、熊本ワインのこと、熊本県のいろんなスポットのこと。シェフも移住されてきたかたなので、外の人間の視点がある。育って住んでじゃない人だからこそ発見できることもありますよね。
いろいろ勉強させていただきました。シェフの他谷憲司さん、ありがとうございました。素敵なお店を教えてくれたYちゃんにも感謝。
きょうにでも再訪したい一軒。
「ハクオーさん、熊本食味わうなら『瓢六』も行っておいたほうがいいと思いますよ」
先の他谷シェフからおすすめいただいたんです。旅先でこういうの、うれしいですね。
すぐさま行くよ。
カウンターに座れば「おでんがおすすめ」と店員さん。「よしきた!」ってなもんです。右から燻製すり身、馬スジ、白菜。色はしっかり濃い目ですけど、食べると意外やあっさり。米焼酎の『待宵』をロックでいただきました。
もやし入り巾着のうまかったこと。これ、家でもマネしてみたい。
馬肉しょうが焼きやガラカブの煮つけも惹かれたんですけどねえ…。ピーマン焼きってのも気になる。 店員さん、私の母親世代の女性が多かったんですが、彼女たちの熊本弁を聞いているのが実にたのしかった。もっと熊本弁のシャワーを浴びたかったな。
ごちそうさまでした。
郷土料理がギュッと詰まったお店の看板。
さあ、シメはこちらに。
ご存知『桂花』本店です。料理雑誌の編集Rさんより「本店はひと味違うからぜひとも寄ってみて!」とおすすめいただいてたのでした。
小盛りがあるの、なんともうれしい。「こけいか」ってネーミングもいいね。繁華街ならでは、「最後にちょっと食べたい」という声も多かったんでしょうな。
しっかりコクに富むスープなんだけど、これまた重くない。つるつるっと食べてしまいました。うーん、東京で食べるのとホント、違うもんだな。いい経験になりました。
帰り道、ものすごーく気になったお店。いいメニュー構成じゃありませんか。
次回は必ず。明日は佐賀と博多を目指します。