先日、とあるお豆腐屋さんでのこと。
隣にいた方が、おいなりさん用の油揚げを手に取ったんですね。多分、70代ぐらいの女の人。わー……おえらいなあ、と思ってしまって。いや、私はおいなりさんってとても面倒に思えて、なかなか作らないのでね。
こんなご時世ですから話しかけるのは憚られたんですが、思わず「おいなりさんですか」と声がけてしまったんですよ。
するとその方「ううん、ひき肉と野菜なんかをね、詰めて煮るのが好きなのよ」と。
「わー、おいしそうですね」
「ひき肉は鶏でね、あと玉ネギ、ニンジン、ゴボウなんかと一緒に。あ、コンニャクを忘れちゃいけない!」
「いいですねえ、今度やってみます」
「上のとこは楊枝でとめて煮るのよ」
「はい!」
なんて会話を交わして、お別れして。
早速、作ってみたのがこちら。
ざっくりしかレシピ伺わなかったので、多分こんな感じだろうな、と自分で補足しつつ。鶏ひき肉はモモとムネを2:1で塩でこねて、ニンジンと玉ネギ、干し椎茸もどしたのと、つきコンニャク(下ゆでしておく)を細かく切る。ちょうど家にあったので、レンコン、キクラゲも同様に。ゴボウは買いに行った日、あまりいいのがなかったのでパス。
全体を混ぜつつ、片栗粉少々、酒、干し椎茸の戻し汁でのばして、柔らかめの肉あんに。
おいなりさん用のお揚げに詰めて、白だし、干し椎茸の戻し汁、酒、醤油で作ったおつゆで10分ぐらい煮る。火を止めたらフタして、しばらくなじませました(15分ぐらい)。
うーん………いいですねえ、しみじみおいしい。いろんな食感を感じられるのがおいしさの肝だ。白滝じゃなく刻んだコンニャク入れるの、いいもんだな。
またお会い出来たら、「とってもおいしかったです」とお伝えしたい。
さて、ひとつ本もご紹介。
関容子さんの新刊『銀座で逢ったひと』(中央公論新社)がね、とても良かったんです。『銀座百点』の連載時から楽しみだったエッセイ。
すごい顔ぶれ。
親交のあった人々の思い出話、彼らの「いかにも」な部分をさりげなく描写する関さんの筆致は無駄がなくて、あざやかで、あたたかくて。
池内淳子さんや桂米朝さんのくだりが特に好き。初代中村獅童さんのことを聞けるのは貴重ですよ(読める、というより……何か関さんとおしゃべりするような気になる本なので)。しかし関さんって、本当にいろんな方と面識があるんだなあ…。
男女問わず広く好かれる方なんでしょうね。中村雀右衛門さんの最後の舞台のときにたまたま席が隣でお話できたと思うんだけど、あれは関さんだったのか。
そしてはい、10月ですねえ。
秋が深まるかと思えば明後日ぐらいまで夏日のよう。
それではまた。