レディー・ガガ主演、ブラッドリー・クーパー初監督作にしてW主演の『アリー/スター誕生』を観てきましたよ。
映画『アリー/ スター誕生』予告【HD】2018年12月21日(金)公開
いやー…良かった。
好きな映画でした。
レディー・ガガの歌ってこれまできちんと聴いたことなかったんですが、歌唱力のある人なんですねえ。パフォーマーというか、ファッションや率直な発言などしか記憶になかった。
『スター誕生』はこれまでに4回映画化されているんですが、1954年版のジュディ・ガーランド主演作が私はもうね、大好きなんですよ。サントラも何十回聴いただろうか。
本作内でもタイトルバック、ガガが口ずさむ曲は『虹の彼方に』のヴァース。ジュディへのオマージュですね。その時点でもうワクワク、期待が高まりました。
なにせ物語の肝となるのが、ヒロイン・アリーの圧倒的な才能なわけですよ。
歌手の卵がスターに見いだされてチャンスを得て、世の中に認められる。人気を得る。その見いだされるシーンで「すごい才能だ……!」とこちらを圧倒してくれなければ物語として成立しない。ジュディは「belter」(声量があってよく通る、筒のある声の歌手と私は理解しています。単なるボリュームだけではなく、ドラマティックな声の歌手というか)なんて言われましたが、そういうタイプの歌をレディー・ガガもしっかりと体現していました。
Judy Garland - "The Man That Got Away" from "A Star Is Born"
これは1954年版の『スタア誕生』より、ジュディがスターに見いだされるシーン。
ガガ版ではエディット・ピアフ的な眉で『バラ色の人生』が歌われます。なんでこういうシークエンスにしたのか、監督に訊いてみたいところ。
で、監督で主演もつとめるブラッドリー・クーパー。初監督作とは思えない上々の出来で、余情を大切にした品のある演出で見事でした。ライブシーンの撮影など、どのくらい彼の意向が活かされているんだろう?
とにかくいろんな種類のステージが出てくる映画なんですよ。街のライブハウスから野外ステージ、コンサートホールからグラミー賞の授賞式、サタデーナイトライブのステージまで。それぞれの撮り分けというか、「小屋別」のニュアンスのすくい取り方がしっかりしているんですね。なかなかできることじゃないと思う。ちなみに撮影監督はマシュー・リバティーク。
うーん。
クーパーの演出、時折『ストレイト・ストーリー』のデヴィッド・リンチとか、ヴェンダース的なものを感じました。簡単にいえば「侘び」的な視点。乾いているんだけど、情はある。でもべとつかない。
ちなみにクーパー演じるカントリー歌手はジャクソン・メインという役名。54年版のジェームズ・メイスン演じる俳優はノーマン・メイン。
ああ、クーパーに54年版をどう思うか訊いてみたいなあ……!
ここからネタバレになります。最後にアリーは亡き夫に捧げる歌を披露するんですが、その最中に生前の彼を挟む演出が素晴らしかった。ここには泣かされました……。
そしてラストのアップ!
ぜひとも映画館で観てほしいと思います。家の音響ではもったいない。
細かいことを列記。
プロデューサー役のラフィ・ガヴロンが適役。どこかで見覚えがと思ったらアンソニー・ミンゲラの『こわれゆく世界の中で』のあの少年だったか。ナイーヴな芝居が印象的でしたが、今回はドライでクールで必要なことしか言わない役。最後に「引導」を渡す大事なセリフ、うまかった。
そしてクーパーの兄役をつとめたサム・エリオットがこの作品に厚みを与えましたねえ。やり過ぎず、出過ぎないのに雄弁。才能と運があった弟、裏方にまわった兄。そういうドラマもこの映画の彩りのひとつとなっていました。
ちなみにクーパー、歌もすごく説得力があって驚いた驚いた。歌って演奏して主演して監督してプロデュース、脚本も参加して。凄すぎますね。今後クリント・イーストウッドのような大監督になっていくだろうか。
『スター誕生』は1976年にあのバーブラ・ストライザンド主演でも映画化されているんですが、こちらは未見。鼻うんぬんのくだりはひょっとしてこちらから取られているのかな?
最後に「エリザベス・ケンプの思い出に」と献辞がありましたが、こちらはどうもブラッドリー・クーパーの演技の師のようですね。
とりとめもありませんが、以上『アリー/スター誕生』の感想でした。