白央篤司の独酌ときどき自炊日記Ⅱ

フードライター。郷土の食、栄養、暮らしと食をテーマに執筆しています。連絡先→hakuoatushi416@gmail.com 著書に『自炊力』『にっぽんのおにぎり』(理論社)、『ジャパめし。』(集英社)など。メシ通『栄養と料理』『ホットペッパー』などで執筆中。

ネルソン・フレイレのリサイタル

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いきなりですが錦糸町には、スカイツリーがよーく見える道があるんですよ。

さて今日は、すみだトリフォニーホールにやってきました。楽しみにしていたブラジルのピアニスト、ネルソン・フレイレのリサイタルなんです。

 

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フレイレというと、日本ではアルゲリッチとのこのデュオアルバムが有名かも。ラフマニノフ組曲ラヴェルの『ラ・ヴァルス』の決定的名盤…と言っちゃっていいのでは。最初聴いたときは衝撃でした。1982年録音かあ…(遠い目)。

もちろん彼自身、世界的な評価を受けている名ピアニストなのですが、私もただCDや動画で楽しんできただけで、生で聴くのは今回がはじめて。

 

 

ともかくも結論から。

いやー……よかったです。

 

バッハ、シューマン、ブラジルの作曲家、ヴィラ=ロボス、そしてショパンというプログラムでしたが、特にシューマンが素晴らしかった!

「幻想曲」、何分ぐらいで弾いたのかなあ。

いささかも退屈することなく、あの長く、不思議な陰影と起伏に満ちた曲をなんとも魅力的に演奏されました。

ショパンでも感じたことですが、レガート奏法の極致とも思えるようななめらかな音色、一切の濁りを生み出さないペダリングの妙、手首の呼吸の絶妙さ、左手の低音部における聴き手の胸にズシリと響くような強音の美しさとショック感…美質を挙げたらキリがないくらい。

ただ、「諸手をあげて」というのでもなく。

最初のバッハはやや精彩を欠く印象。「なんかベートーヴェンみたいなバッハ」とも思ったり。そしていくぶん…全体的に素っ気さ無さも感じたり。

よくいえば枯淡の境地…かもしれないけれど、「そんなにも綺麗に歌っているんだから、もうちょいひたらせて、そんな早く進まないでよう…!」などと数回思ってしまいました。

でも、変にタメても…台無しですしね。ただそう思ってしまうぐらい彼のアンコールピースの定番、グルック(スガンバーティ編)『精霊の踊り』は感動的でした。

どうやったら、あんなきらきらしい音が出るんだろう…。

聴きに行けて、よかった。来年も来日公演があるようですよ。

 

 

 

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リサイタル終了後、サイン会でのフレイレ

 

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サインしてもらっちゃいました。

ちょっとフレイレ…二代目中村鴈治郎に似てるような。

 

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この日は台風で雨が心配でしたが、電車も3分ほどの遅れで無事最寄り駅に到着。ありがたや。

 

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クラシックピアノといえば、中村紘子さんの「新刊」も届きました。

近いうちに、感想をつけておきたいと思います。