白央篤司の独酌ときどき自炊日記Ⅱ

フードライター。郷土の食、栄養、暮らしと食をテーマに執筆しています。連絡先→hakuoatushi416@gmail.com 著書に『自炊力』『にっぽんのおにぎり』(理論社)、『ジャパめし。』(集英社)など。メシ通『栄養と料理』『ホットペッパー』などで執筆中。

京都にてすぐき漬け見学、そして大原の畑へ

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京都の上賀茂で、すぐき漬けの作業場を見学させてもらいました。

うかがったのは八隅(やすみ)農園さん。自分たちですぐき菜を栽培し、自分たちで漬ける農家さんです。

 

www.kyokamoyasai.jp

 

 

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 すぐき菜を皮むき中のみなさん、なんともスピーディ!

 

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むかれたすぐき菜

収穫がはじまるのは11月から、まず皮をむいて、水を張った大きな樽に塩して漬けるのだそう。翌朝またひとつひとつ洗ってから、いよいよ本漬けに移ります。 

 

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大樽から上げられた、まさに「一夜漬け」のすぐき。

 

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 すぐきのサイズや形を揃えつつ、大きなバケツに漬けていきます。後ろに写っている木樽が一夜漬け用の大樽。

 

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茎をよって、うずまき状に漬けていくのですね。ちょうど本漬け作業デビューの方がいらっしゃったのですが、「むずかしい……」と呟かれていたのが印象的。真剣な表情に、ちょっと話しかけるのがためらわれました。

このとき、朝の9時過ぎぐらい。
 

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八隅農園、五代目の八隅真人さん。作業の手を止め、丁寧に教えてくださいました。すぐきの皮むきは小学校の頃から手伝われていたそう。

 

「茎をひねって入れていくのは、そのほうがあとで取り出しやすいというのもあります。塩だけを使って漬けていくんですよ。翌日にはもう樽の半分ぐらいまで水が出ます」

 

すぐきのほか、収穫した野菜の振り売り(トラックに積んで街中に売りに出ること)もされている八隅さん。朝採り野菜が買える京都の人々が、うらやましい。

 

農業体験も実施されているとのことで、次回はぜひ参加してみたいです。

 

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写真の後方は本漬けの模様。本漬け終了後、室(むろ)に入れてあたたかくして乳酸発酵を促進させ、完成に至ります。今年初のものは11月末あたりにできるそうで、今から楽しみでなりません。

 

角谷香織さんのこと

 

今回、仲介の労をとってくださったのは角谷香織(すみやかおり)さん(@sumiyashiro )。京都で農家さんをまわり、野菜販売をされている方です。ご自身も京都生まれで京都育ち、京大卒というご経歴。

ツイッターでその活動を知り、とても興味深く拝見しておりました。機会があり、角谷さんがセレクトされている野菜をいただけたのですが、まあどれもこれもおいしくて。

 

あるとき「お客さんを連れて農家さん見学をしてきました」というツイートを拝見して、思わず私も「参加させてください!」と申し出たところ、快諾してくださったというわけ。

ありがたいことです。 

 

角谷さんのホームページ「Gg's」

 

 

 2枚目の写真、作業に見入る私。

 

八隅さんにお礼をのべて上賀茂を後にし、次は大原の畑へ連れていってくださいました。

 

山本有機農園 

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 ああ、 なんともいい天気! 

 

 

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 ご紹介してくださった、山本有機農園の代表・山本克也さん。

www.koyof.com

 

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カブや赤カブを間引きがてら、私にも引っこ抜かせてくださいました。

 

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里芋もスコップで収穫、初体験!

「土のね、こことこここに、縦にスコップ入れてみてください。そうそう、それでちょっとかたむける」

 

ざくっと音が地から響いて、里芋のかたまりが出てきました! 

「ここが親で、そのまわりが子芋、そしてこれが孫芋。孫芋が一番価値があるね」

 

切りたての里芋の株のなんともみずみずしかったこと、忘れられません。 

 

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 「それにしても、きょうはいい日ですよ。暖かくて。明日から寒くなるらしいから、いいときに来ましたね」

 

京都の冬は寒いんでしょうねえ、とお聞きすれば、

「それはもう。京都で農家やっていながら、京都の冬はいやですもん(笑)。寒くてねえ……」

と山本さん。降るときは、雪もひざ下ぐらい積もるそう。

 

 

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山本さんが育てた日野菜。

畑にはまだまだ収穫される前の日野菜がいっぱいに。1本引き抜かせてもらいましたが、しっかりと大地にからみついて、抜くのになかなか力が要ります。

 

体は細いけど、たいしたもんだなあ、日野菜。根を張るパワーに感じ入り。

 

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  こちらは、先の八隅さんのすぐき菜畑。

日野菜もすぐきも、京漬物の定番。いちめんに広がる畑から、京都のあちこちにある漬物屋さんの多さが思い出されます。畑全体が京都の人達に「待たれている」感じがしました。

 

 

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 ニンジン畑。

うまく撮れませんでしたが、朝露がきらめいてなんともうつくしかった。

 

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 またも引き抜き体験を。

力を入れると、大地と離れがたい感じで「いやや」と抵抗されます。ごめんよ、と思いつつグッと引き抜く。

 張りのあるボディ! これがまさに、採れたての「顔」か。

 

 山本さんは畑それぞれの性質の違いや、獣害のことも教えてくださいました。角谷さんと肥料について意見交換されていたのも興味深く。お豆腐やさんから出るおからも肥料になるのですね。保存がむずかしいから実用はなかなか大変とのことでしたが、角谷さんはいろんな業種の人々を農家さんとつなぐ役目もされていることを知れました。

 

 

角谷さん、八隅さん、山本さん、貴重なお時間をありがとうございました。

 

 

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 山本さんのところでいただいた野菜、スミヤさんが別の農園さんの作業場を借りて泥を落としてくださり、分けてくださったんです。

そのまま我が家に連れ帰りましたよ。

 

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 里芋、ニンジン、カブ、カブ葉をオリーブオイルと塩コショウ、ニンニク、そして生鮭と一緒にソテーしました。煮物もいいけど、なんか味を染ますのがもったいなく思えてねえ。

野菜がどれもみな、味が濃い! そして香りがなんとも素直だ。うれしくなる。

 

ちょっといい白ワイン開けてしまいました。

 

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 ニンジンはラぺにもして、紅心大根は軽くマリネに。

 

ああ、おいしかった…………ごちそうさまでした。

 

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大原の畑にはまだ蝶が飛んでいましたよ。