白央篤司の独酌ときどき自炊日記Ⅱ

フードライター。郷土の食、栄養、暮らしと食をテーマに執筆しています。連絡先→hakuoatushi416@gmail.com 著書に『自炊力』『にっぽんのおにぎり』(理論社)、『ジャパめし。』(集英社)など。メシ通『栄養と料理』『ホットペッパー』などで執筆中。

中村雀右衛門襲名公演・初日のあれこれ

 

 

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きょうは、歌舞伎座へ行ってきました。

五代目 中村雀右衛門 襲名公演 を拝見してきましたよ。

             (なかむら じゃくえもん)

 

 

歌舞伎にハマったのは、21歳ぐらいのときだったかなあ。20年前ぐらい。

その頃、最も惹きつけられた役者が先代の雀右衛門さんだったんです。

 

2012年に亡くなられて、そのときは本当に、本当にさびしく思いました。

(※そのときの日記です ↓ )

 

 

しかし、ご子息の中村芝雀さんが、このたびめでたく襲名の運びに。

 きょうがその初日だったのです。

 

開演前には、歌舞伎座正面玄関でご挨拶がありました。

 

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おお、ものすごい人だかり!

 

 

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マスコミ各社も来ていて、にぎにぎしく初日が迎えられたことに

いち京屋ファンとしてホッとしました。

 

 

 

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鏡開きのお酒は『澤乃井』で有名な、東京・青梅の小澤酒造さんによるもの。

 

 

 

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さて、中に入ってみれば引幕はこんな感じ。華やかですなー。

元絵は文化勲章も受章された松尾敏男さんによる日本画です。

牡丹の花がそれはもういっぱいに。

 

 

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二階の出入り口から見た一枚。

京屋結びの紋が大きく見えて、ちょっとこの構図が感慨深かったのです。

 

 

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幕間にて。歌舞伎座に行くとよーく食べる小倉モナカアイス(350円)。

これ、おいしいのですよ。ついつい食べてしまう。

あと、3階で買える『花見』の和菓子もおすすめ。

 

さて、演目に関しても感想をちょっとつけておきます。

なにせ初日ですし、おめでたい公演なので、あれこれ言うのも野暮というもの。

よかったな、と思ったことだけを書き留めておきますね。

 

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1:『曽我対面』

中村勘九郎の十郎がニン。このひとは五郎もやるけれど、こちらが本役だと思う。品がよくて人がいい役が合うんだよなあ。悪いひとにだまされる、ひどい目に遭う…そんな役を観てみたいと思う。 中村梅枝化粧坂の少将、実に古風な面差し。写真でしか見たことのない三代目時蔵がそこに重なる。彼からしたら、ひいおじいさんになるのかな。歌舞伎の血ですな。

 

2-1:『女戻駕』

なかなかに楽しい舞踊。戦後になって今回含め4回ぐらいしか上演されてないよう。尾上菊之助、やはりうつくしい。『喜撰』のお梶のようなこしらえで、腰から脚にかけてのラインがまさに「柳腰」という感じ。スタイルがいいというよりも、身体の使い方がきれいで鍛錬されているからこそだ。空気感のある踊りができるのは玉三郎さん以降だとこのひとしかいない。

 

2-2:『俄獅子』

特に感想なし。

 

3:『鎌倉三代記』

五代目中村雀右衛門の披露演目。お父さんも得意にしていた時姫、丁寧に演じられていて結構なのだけれど、もっともっと「私が主役!」という「我」を出していっていただきたい。「控える」という女形の美質はこのひとの持ち味だけれど、出るところはもっと、もっと大きくやってほしい…四代目はそのバランスがとてもうまかった。「化けて!」と祈らずにおれない。芝雀…じゃない、雀右衛門さん、応援しています。古風で正統な女形はもうあなたのほかに(あまり)いないのです。

菊五郎が休演、菊之助が代役。初日なのにしっかりと三浦之助を演じていた。

播磨屋と葵太夫の掛け合いがききもの。 

 

4:『団子売』

『女戻駕』で花道出したからか、板付きで登場。向こうは駕籠かきとはいえ、同じ格好だものね。片岡仁左衛門が登場して笑顔を見せるだけで場がなんとも華やぐ。孝太郎の個性がこの曲の持つコミカルな情趣によーく合っている。お面取って決まるところでニザさんが取るタイミング抜かしてしまって、その一瞬になんとも愛嬌がにじむ。役者だなあ…としみじみ。いい打ち出しだった。