豆腐があって下仁田ネギがある。
こりゃ湯豆腐しかないでしょう……ということで、午前中から湯豆腐に。
『美味しんぼ』であったな、こういうの。確かに不思議な昂揚感がうまれるね。
うん。父が一時、湯豆腐に凝ったことがあった。
25年ぐらい前で、私はまだ中学生。あの頃に、湯豆腐の作り方は覚えた。
といってもごく簡単、
1:鍋に水を入れて、
2:10センチ角のだし昆布を入れ、沸騰しない程度にあたためる。
(母がちょっと得意げに「六甲のおいしい水」という当時はやったミネラルウォーターを使っていたのを思い出した。水を買うのが不思議でなくなったのは、ここ25年ぐらいのことだと思う)
3:しばらく経って煮えてきたら、豆腐とネギを入れて、終わり。
そば猪口に醤油とおかかを入れて、鍋に一緒に入れていたような。あそこに料理酒もちょい入れていただろうか。※この醤油はかならず濃口で
このあたためた鰹醤油で、湯豆腐をいただく。
「ショウガすりおろして」
母に毎度頼まれるの、面倒だった。どうしてあんなことでぶーたれたのだろう。気持ちよく引き受けておけばよかったな。
湯豆腐を食べて、テレビを見て、ビールを飲んで、寝る。日曜の父のお決まりコース。
食事中は、ほとんどしゃべらない。話しかけても空返事。
損保の営業で、当時40代後半だった父。管理職だったし、疲れていたんだろうと思う。スイッチの切れた人形のようだった。でも口と目だけが動いていた。
平日はつきあいやら接待やらで、濃いものを食べていたんだろう。胃を休めたかったんだろうな。
我が家の日曜日は、父にとって心安めの場所になっていたんだろうか。
うちの湯豆腐は本来、カキもたっぷり入れてつくるもの。
誰かを呼んで、カキ湯豆腐会でもやろうかな。
◇お知らせ
オムロンのサイトで連載しているお弁当コラムが更新されました。
今回は鶏団子と野菜たっぷりおかずのお弁当です。
ちょっとのぞいてみてください。