白央篤司の独酌ときどき自炊日記Ⅱ

フードライター。郷土の食、栄養、暮らしと食をテーマに執筆しています。連絡先→hakuoatushi416@gmail.com 著書に『自炊力』『にっぽんのおにぎり』(理論社)、『ジャパめし。』(集英社)など。メシ通『栄養と料理』『ホットペッパー』などで執筆中。

渋谷 『三漁洞』

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 行ってみたかった渋谷の『三漁洞』、編集さんと打ち合わせを兼ねて行ってきました。ハナ肇とクレージーキャッツの元メンバー、石橋エータローさんがつくったお店です。渋谷駅からホント、すぐなんですよ。

 

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 まずは生ビールでのどをしめらせて…プハー!

 

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 お通しはマグロを炊いたのと、ミニ奴でした。

 これだけで一合やれるな…。

 

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 あ、キャッツ。

 

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 石橋エータローさんと父君の福田蘭童氏。

 この福田蘭童というひとは尺八奏者で、実に興味深い人生を歩まれたかた。

 

 戦前の尺八奏者というのは、今でいう人気ミュージシャン的存在だったようです。もうちょい前の大正時代だと琵琶奏者も一世を風靡したとききますね。ちなみに樹木希林さんのお父さんは琵琶奏者、さらには高峰三枝子さんのお父さんは琵琶の家元。

 

 ともかく、福田蘭童は結婚してエータローさんを成すも、当時の大女優・川崎弘子とスキャンダルを起こし、石橋さんの母親とは離婚。

 戦前生まれのひとにとって「福田蘭童」というネームは「ああ、あのプレイボーイの」という響きのようで、私も昔、大正生まれの叔母に訊いてみたら同様の反応でした。

 エータローさんとはそれなりの恩讐もあったようですが、のちに和解。ふたりとも大の釣り好きで「自分達で釣った魚で一杯やりたい」という思いから、このお店を設けたのだとか。うーん…古き良き時代の道楽者という感じだなあ…。

 

 

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 名物というアサリの酒蒸し、800円でこの量と質は嬉しい。ニンニクが隠し味になっていました。

 

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 これも名物というカニとコーンの焼きもの、コキール風。

 先にこれを頼んでビールでやり、あさりは日本酒にとっておくのが吉策かなあ。今度はそうしよう。

 

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 お刺身盛り合わせ。

 2500円のがメニューにありますが、1500円のミニ版をつくってくれました。

「2500円かあ…」と内心まよっていたら、女将さんがこちらをすすめてくださって、ありがたかったです。

 女将さんはそう、石橋さんの奥様。とても穏やかな、言葉のきれいなかたでした。

 

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 ブリ大根もオーダー、なんとも見事な染み具合!

 

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 私の大好物、かにみそ。

 これで燗酒をやるのが至福のひとときなんです…。

 

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 編集さんが〆のおむすびを注文。

「鮭と梅、どっちにしよう…」と具をまよっていたら、女将さんから「どっちも入れてあげましょうか」なんてお言葉が。

 いたみいります。

 

 内装も味のある和のつくりで、昔の日本映画にまよいこんだような雰囲気。あの伊藤熹朔さんによるものだそうですよ。

 昭和の映画が大好きな身としては、愉しいひとときでした。

 渋谷駅を出て桜丘町のほうに歩道橋を渡ってすぐのロケーション。またうかがいます!