魚津で目覚める朝。
ほどよく腹も空いて朝食に向かえば、ホタルイカの沖漬けがありました。ほくほくの白めしに1つのせてかっくらう。
塩気に唾がわき出てきて、むしゃむしゃと咀嚼。ごくりと飲み込み、お茶を一服。
いい朝だね。うれしいよ。
昆布巻きのカマボコに、ニギスの干物もありました。最近はビジネスホテルでも食事に郷土色を反映するところ、増えてますねえ。
朝食のテーブルはビジネスマンでいっぱい。
「昨日さ、サッカーすごかったみたいだねえ」
「イラン戦、見たかったよなああああ!!」
接待でも受けていたんだろうな。ほほえましい時間でした。
ちなみに泊ったのは駅からすぐの魚津マンテンホテル。北陸で数店舗経営されるグループのよう。
部屋に加湿機能付きの空気清浄機があって、1階に富山のミネラルウォーターが無料で飲めたのがうれしかったな。スタッフさんも感じのいいかたばかり。
お世話さまでした。
さて、電車の時間まで魚津を散歩。
早朝はけっこうな雪だったけれど、すぐにやんで光がさしてきましたよ。
うっすらと立山連峰。
魚津市庁舎。どんより雲がかかっちゃって、残念。このすぐそばにスーパーの大阪屋があって、開店同時に拝見しました。立ち並ぶ地元のかた、けっこうな数。どんどんこういう地元スーパーが少なくなっている昨今、応援したいなあとしみじみ。
店外で売られていたマンリョウやセンリョウ、買って帰りたかった。
市庁舎近くの気になるお店。
魚津駅ホームからの眺め。このとき、けっこうな雪が降っていたんですよ。心に鳴り響く森昌子。
インスタに動画を投稿してました。
ありがとう魚津。また来ます! 今度は蜃気楼の季節に来られるといいな。
そして富山駅へ。
ちょうどお昼ぐらいに着きました。まずは隣接する「キトキト市場とやマルシェ」へ。
両手で抱えるほどの大きさ!
これ、すべてカマボコなんですよ。細工カマボコと呼ばれ、富山県内のお祝いの席ではおなじみのもの。
このぐらい立派なものは結納のときに用いられますね。結婚式でもありますけど。
昔、家の新築のお祝いで差し上げたことがあります。
お祝いでいただくとね、切り分けてご近所さんに配るんですよ。お福分けって言いますね。
最近はこういう手頃なもののニーズも高まっているようです。
上のカマボコはどれも河内屋さん調整によるもの。写真を撮らせてくださって、ありがとうございます。店員さんがいろいろと教えてくれました。
前から細工カマボコに興味があったので、今回の富山行ではいろんなかたに質問してみたんです。生の声がたくさん聞けて、うれしかった。
富山の市街地へ
富山駅から市街に歩けば、途中に富山市役所が。中には大きな吹き抜けもあって、素敵な建物でした。
この市庁舎、展望台があるんです。入場は無料。
スッキリ晴れていたらここから立山連峰が大パノラマなのだそうですが……あいや残念。日頃の行いの悪さ、こういうときに出ますね(笑)。
( ノД`)シクシク…
なんか富山市街はとても、しっとりとしたまちでした。歩いていて楽しかったな。
市役所のそばにあったこの建物、気になったんですねえ。近づいてみれば工業関係の会社のよう。
このビルのたたずまいにも妙に惹かれて、近づいてみれば……
「ハッスルキャバレー」なるパワーワードに出会えました。5号店ってのもすごいね。
富山第一銀行の旧本店になるようです。きれいなカーブラインで思わず撮ってしまいました。
先の旧本店の隣にあるブレトールというお店、サンドイッチが妙においしそうだったのですよ。心のこりなんだ。
これで「そうがわ」と読みます。
読めなかった。
ここもすごく惹かれたお店、洋食屋さんなのかな。おかませ定食とかミニッツステーキ定食とか、食べたかったなあ。
総曲輪は気になるお店が多かったですよ。
イタリアンバルの『ベオーネ』 は今度寄ってみたいので、メモ。
上の写真2枚は「ペリカン堂」さんなる小物雑貨店。
いろいろとツボで、やたら買ってしまいました。コースターと鳥の刺繍細工はバングラデシュ製だそうですよ。ご主人、店内を撮らせてくださってありがとうございます。
値段づけがとても良心的に感じました。
他に富山和紙の名刺入れも購入。
総曲輪2丁目にある『古本ブックエンド』という古書店も良かったなあ。ちいさなお店でしたが、ぎゅっと詰まってセレクトが良くて。
これも古本ブックエンドで購入、「富山の日常を旅するガイドブック」として地元ライターの居場梓さん、高井友紀子さんのお二人が作られているリーフレット『スピニー』。デザインや写真もすごくいいんですよ。第1号は富山駅南口徒歩15分以内がテーマ。またすぐ富山に旅したくなった。 pic.twitter.com/pBjrcTcB4G
— 白央篤司 (@hakuo416) February 2, 2019
荻昌弘さんの食エッセイも購入。
さて、富山市でも行きますよ。スーパーマーケット探訪。
- 昆布じめは甘エビ、カジキが並んでますね
- カジキは刺身ネタでも定番
- ミギス(メギス)がツヤ良くなんともうまそう
- おにぎりコーナーのセンターにはとろろ昆布おにぎり
- 3個入りの海苔つき押し寿し、各スーパーで定番商品のよう
- 惣菜コーナーに「べっこう」がある
別のお店なんですけど、明日の朝ごはん用にミョウガ入の押し寿しと「べっこう」を買いました。「べっこう」は、甘からいおつゆに溶き卵を入れて寒天でかためた郷土料理。石川だと「べろべろ」って呼ぶんだったかな。こちらのは結構甘めでした。
さてさて、昼食がまだなんだ。腹減ってきたぞ。
店構えにやられちゃって、『つるや本店』、まよわず入店。
店内がまた素敵だったんですよ。民芸調。松本にありそうな感じだなあ。
いやー、悩んだ悩んだ……この字の感じがまたいいでしょう?
鴨や天ぷらもいいけれど、夜のことも考えてサッパリとおろし蕎麦にしました。しっかりしなやかなお蕎麦を堪能。歯ごたえ、実によかった。
お運びのおねえさんたちもハキハキと感じのいいかたばかり。和みましたよ。
ありがとう。
ズバリッ! ひとり声に出しました。
ここを入っていきますよ。
八島こんぶ店。
惹かれる佇まいじゃありませんか。ええ、入りました。入ってみれば昆布のいい香りに満ち満ちて。
味見させてくれるんですよ。これは、とろろ昆布。
黒みがかったこちらもとろろ昆布。昆布の表皮から削っていって、だんだんと中に近づいていくと白っぽくなるんですね。
お酢を霧吹きで吹きつけてから削ることで独特の風味がつきます。
そんなあれこれを試食させていただきつつ、うかがってきました。女将さん、ありがとうございました。
さて、富山市立図書館がすごいデザインだったのでご覧ください。
すごいよねえ。
隈研吾さんの設計だそうです。
ちょうどジブリ展なんかをやっていて、平日昼から結構な人出でした。
いい空間だった。
うっすらと、立山連峰。
日が暮れてきた。
今回富山市街で、かまぼこ専門店をいったい何店舗見つけただろう。市民のみなさんそれれに贔屓があるんだろうな。
ふと現れた蔵。
古い建物と民家、新しい住宅の混ざり具合がすごくよかったな、このあたり。
ふと見つけた、リカーショップ石川さん。
女将さんが店内写真も撮らせてくださいました。魅力的な酒屋さんだったんですよ。
富山の酒、充実。
山本富士子さん、白雪のイメージモデルをされてたんですね。
いろいろ買って帰りたいところを、がまんの子。
柳町のあたり。先の河原のあたりからここらではお地蔵さんがとても大切にされていた印象。信心のあるまちはうつくしい。
さて歩き回って腹もこなれて、夜ごはん。ツイッターで「富山に行かれるならぜひこちらへ」と教えていただいたお店が目当てでございました。
居酒屋『舞子』
18時の開店と同時に入りました。予約の電話を入れたんですが、「何時から?」と聞かれて「ひとりで、開店の18時で」とお願いしたら、「じゃあ予約しなくても大丈夫ですよ」なんて(笑)。あ、でも二人以上だったら必ず予約したほうがいいようです。
そしてね、黒板メニューが本当に、すごかったんですよ。
エキサイティング。
私がこの黒板を前にどれだけ興奮したかお分かりになりますか。
そしてもうね、どれだけ悩んだことか。
絞り切れない!
お通し、とても大きなバイ貝の煮つけ。赤ちゃんのこぶしよりも大きいぐらい。するりと外れて、肝までしっかりしたバイだった。
うれしいなあ。
ぼんやり。
富山のおかずっていうとね、こういうバイ貝の煮つけが大皿にどんと盛られてて、それがいつも食卓にあるイメージ。すごく身近なものなんですよ。でもきょうのはちょっと大きすぎるね(笑)。私は煮つけならもうちょい小ぶりなバイ貝を使いたいところ。
女将さんがあとで教えてくれました。
かなめさん、という女将さんがひとりでやられているお店です。いや、いつもはアルバイトのかたもいるよう。
「おでんなら早く出せますよー」
ハイ! いただきます。
「すすたけ」はネマガリダケ、「さんかく」は厚揚げのことだそう。お願いしたのは、
「矢車」です。
これ食べてみたかったんだー、お麩にうずらの卵を落としたもの。富山ではおなじみのおでんダネなのだそうですよ。練り物屋さんでたしかによく見かけました。
そして「カニ面」です!
中にはカニ身と内子やらがみっしり。。
嬉しいなあ。
そればっかり(笑)。
エビですよ、エビ!
「キジエビの刺身、お願いします」と言ったら、「甘海老もあるから、盛り合わせましょうか」と提案してくださいました。そんなの乗るしかないでしょう。
頭味噌までしっかりのエビをつまみにしばし、ゆっくり飲みました。
あとはさあ、どうするか。
悩みに悩んで、白子とカキの昆布焼きをお願いしましたよ。
こちらのお店、かなりポーションがしっかりなんです。あれこれ食べたいので、ちょっと少な目にとお願いしたら「どのくらいにする?」と目の前で塩梅してくださいました。
本当はこの3倍ぐらいあるんですよ。
昆布にのせてグリルで焼いて、最後にフタして蒸し焼きで仕上げ。
これ、私の写真の腕が悪くて写ってないんですが、湯気がしっかりたって香り高いことこの上なかったんです。
ひっくり返すとこんな感じ。
もうプリプリでプリプリで。そりゃなまめかしかったですよ、ハイ。
白子がまた最高でした……。
心の中ではしゃぐはしゃぐ。にやにやしてたんだろうな、俺。
昆布焼きって本当にもう昆布にのせて焼くだけなんです。でもカキは塩気もあるしうま味も強いからさっぱりした薄手の昆布でやる。白子は逆に濃厚さはあるけどそれだけじゃ弱いから厚みとうま味のある昆布でやったほうがいい。
と、女将さん。
昆布料理も細かないろいろがあるんだなあ。きっと昆布じめでもモノによって使う昆布を変えていそう。そのあたりを今度うかがってみたい。
地元の銘酒、『勝駒』のしぼりたて。かちこまりました。
先の昆布、もうそれだけでつまみになるんです。割いて長らく楽しみましたよ。
最後に、ゲンゲのお吸い物をいただいたんですよ。
すばらしかったな。
ゲンゲってから揚げとか天ぷらにするお店も多いけど、私は吸い物もおすすめにしてます。いいダシが出るんですよ。
もうそうときたら頼まずにはおれません。
そしてやっぱり、素晴らしかった。体験したことのないうま味と良い香り。
あったまったなあ。
なんてひとりごちていたら、さっき食べたエビの残りがカリッと揚がっておつまみに。
「うちのお決まりなんですよ」と女将さん。
もうさ、そりゃあ嬉しいよねえ。。。。
ゲンゲ、身の回りにゼラチン質のねっとりがあるの分かります?
身もすべて、いただきました。
このお店を教えてくださったアッキーさん、ありがとう。
本当に堪能いたしました。
女将さん、また寄せてくださいね。
お店を後にし、市街地までまたウロウロ。
するとこんな酒屋さんが。
ペペすぎもとや
ちょっとのぞいてみようと入ってみたら……
なんと中にカウンターがあって飲み屋スペースがあるじゃないですか。
そりゃ、寄るよね。
地ビールいただきました。
音楽は安全地帯。
ご主人。
隣り合った地元のかたから
「えっ旅行者!? よくここにたどり着きましたね」と驚かれるなど。私もそう思います(笑)。バッカスのお導きだ。
縁ですね。
先のかたが「ここもおいしいよ」と教えてくださったんですが、さすがに腹パンパンで無理でした。次の楽しみにするぞ。
なんかね、寝ちゃうのがもったいなくて、駅のほうまで足をのばしてウロウロしたんです。
ここも入ってみたかったな。
この「キトキト」って言葉、富山から西のほうで使われるようですね。昨日魚津では「あんまりこっちのほうではいわんね」と。私は室井滋さんの本で覚えたんだな。ちなみに室井さんは滑川のご出身か。
キスを昆布じめにしてから天ぷらにするのかー。
昼間の景色の夜版。
中はハッスルしてるのだろうか。
これ、県民会館のそばだったかな。富山市は薬売りで栄えた地なので薬用のガラス瓶生産もさかんだったとか。なのでいまでもガラス工芸には力を入れてるようで、こんなモニュメントが市役所そばに飾られていました。
とてもきれいだったけど、あまり見てる人はいないような。もったいないことだ。
駅前を歩いていて気になったバー。
オールドパーの水割り、いただきました。
初客にもかかわらず「リクエストあったら言ってねー」と明るくライトな感じのマスター。入り口にジャケが飾られていたこともあり、ジェリー・マリガンの『ナイト・ライツ』かけてもらいましたよ。
いい一日だった。
ありがとうございました。
明日は福井へ。