白央篤司の独酌ときどき自炊日記Ⅱ

フードライター。郷土の食、栄養、暮らしと食をテーマに執筆しています。連絡先→hakuoatushi416@gmail.com 著書に『自炊力』『にっぽんのおにぎり』(理論社)、『ジャパめし。』(集英社)など。メシ通『栄養と料理』『ホットペッパー』などで執筆中。

『残草蓬莱』でおなじみ神奈川県の大矢孝酒造へ

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土曜日は『残草蓬莱』(ざるそうほうらい)でおなじみ、神奈川県の大矢孝酒造へ。

特別にお許しをいただき、見学させていただきました。

最寄駅は本厚木駅。そこからバスで30分、徒歩8分ぐらいのところに蔵はあります。

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二十代目ご当主の大矢竣介さん

新潟・弥彦村の『酒屋やよい』さんのイベントでお会いして以来のご縁です。

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蔵は明治時代に建てられたもの。育まれる酒の息吹を感じつつ、あれこれと丁寧に大矢流酒造りのことを教えていただきました。 

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蔵のすぐ裏手には本宅があり、中庭にこの赤い実が。

ピラカンサというんですが、ヒヨドリが食べに来るんですよ。最初は一羽。熟し具合を代表してみてるんでしょうね。ほどよい熟し具合となったら、合図するのかもう十何羽とやってきて、食べつくすんです(笑)。

と、大矢さん。

他にもカリンの木があって、本宅の隣には竹林が。自生のムカゴを採って食べることもあるそう。

すぐそばには中津川、周囲を700mクラスの山々が囲み、酒蔵のすぐ下から丹沢山系の伏流水が湧き出でいました。

住所でいえば愛光町で、このあたりは戦前まで養蚕で栄えたところだそうです。かつては本宅の二階でも養蚕が行われていたとのこと。

そういえば、近くに一軒の古い旅館があったんですね。このあたりに宿泊客があるのだろうか…と疑問に思い、大矢さんに問えば「かつては絹糸やらの行商人が多く仕入れに来ていたのでね」とのことでした。かつては宿も飲食店ももっともっと、多くあったそうです。

今は昔。

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酒造りを始められたのは、八代前のご先祖様だそうです。そのころに植えられたと伝わる木が二本、蔵の入り口にありました。

代々の人々を見つめて、ここまで大きく育った木。

 このあたりは地盤がとても強固だそうで、地震があっても被害は毎回最小限で済んできたとのこと。その地盤にしっかりと根を張って、ここまで成長したんですね。

蔵の歴史の長さを、なによりも雄弁に二本の樹が物語っていました。

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さて、おたのしみ試飲タイムです。

大矢さん自ら、現在のラインナップをひとつひとつ説明してくださっての試飲。

ありがたいことです。原酒系のうま味しっかりタイプも勿論うまいのですが、低アルコール8度前後のラインがやっぱり素晴らしい。こういうお酒が今後、新たな日本酒ファンを獲得していくと思います。

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酒造の入り口に残されていた、昔の電話札。

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見学を終えて帰る頃、蔵人さんたちが米蒸しに使われていたお湯をくみ上げていました。どうされるんですか、と問えば

みんなのお風呂に再利用するんですよ。

 と。

なるほどなあ。

酒蔵は当然のごとく自然の冷気そのまま。さぞかし底冷えされると思います。お風呂にしっかりつかり、そしてやっぱり…熱燗で体をあたためるんでしょうかね。

大矢さんのところには、沖縄の離島から酒造りを学びに来ているかたもいるそうです。

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大矢さん、蔵人のみなさん、本当にお世話になりました。

 ありがとうございました。

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帰宅して早速、買ってきた『残草蓬莱』を晩酌で楽しみましたよ。

 

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翌朝、ツレがこしらえてくれた粕汁。そう、出来たてを分けていただいたのです。まだまだたくさんあるので、「しもつかれ」に挑戦してみようかな?

 

 

 ※ちなみに、大矢孝酒造は基本的に一般見学不可。ご了承ください。