土曜日は『残草蓬莱』(ざるそうほうらい)でおなじみ、神奈川県の大矢孝酒造へ。
特別にお許しをいただき、見学させていただきました。
最寄駅は本厚木駅。そこからバスで30分、徒歩8分ぐらいのところに蔵はあります。
二十代目ご当主の大矢竣介さん。
新潟・弥彦村の『酒屋やよい』さんのイベントでお会いして以来のご縁です。
蔵は明治時代に建てられたもの。育まれる酒の息吹を感じつつ、あれこれと丁寧に大矢流酒造りのことを教えていただきました。
蔵のすぐ裏手には本宅があり、中庭にこの赤い実が。
ピラカンサというんですが、ヒヨドリが食べに来るんですよ。最初は一羽。熟し具合を代表してみてるんでしょうね。ほどよい熟し具合となったら、合図するのかもう十何羽とやってきて、食べつくすんです(笑)。
と、大矢さん。
他にもカリンの木があって、本宅の隣には竹林が。自生のムカゴを採って食べることもあるそう。
すぐそばには中津川、周囲を700mクラスの山々が囲み、酒蔵のすぐ下から丹沢山系の伏流水が湧き出でいました。
住所でいえば愛光町で、このあたりは戦前まで養蚕で栄えたところだそうです。かつては本宅の二階でも養蚕が行われていたとのこと。
そういえば、近くに一軒の古い旅館があったんですね。このあたりに宿泊客があるのだろうか…と疑問に思い、大矢さんに問えば「かつては絹糸やらの行商人が多く仕入れに来ていたのでね」とのことでした。かつては宿も飲食店ももっともっと、多くあったそうです。
今は昔。
酒造りを始められたのは、八代前のご先祖様だそうです。そのころに植えられたと伝わる木が二本、蔵の入り口にありました。
代々の人々を見つめて、ここまで大きく育った木。
このあたりは地盤がとても強固だそうで、地震があっても被害は毎回最小限で済んできたとのこと。その地盤にしっかりと根を張って、ここまで成長したんですね。
蔵の歴史の長さを、なによりも雄弁に二本の樹が物語っていました。
さて、おたのしみ試飲タイムです。
大矢さん自ら、現在のラインナップをひとつひとつ説明してくださっての試飲。
ありがたいことです。原酒系のうま味しっかりタイプも勿論うまいのですが、低アルコール8度前後のラインがやっぱり素晴らしい。こういうお酒が今後、新たな日本酒ファンを獲得していくと思います。
酒造の入り口に残されていた、昔の電話札。
見学を終えて帰る頃、蔵人さんたちが米蒸しに使われていたお湯をくみ上げていました。どうされるんですか、と問えば
みんなのお風呂に再利用するんですよ。
と。
なるほどなあ。
酒蔵は当然のごとく自然の冷気そのまま。さぞかし底冷えされると思います。お風呂にしっかりつかり、そしてやっぱり…熱燗で体をあたためるんでしょうかね。
大矢さんのところには、沖縄の離島から酒造りを学びに来ているかたもいるそうです。
大矢さん、蔵人のみなさん、本当にお世話になりました。
ありがとうございました。
帰宅して早速、買ってきた『残草蓬莱』を晩酌で楽しみましたよ。
翌朝、ツレがこしらえてくれた粕汁。そう、出来たてを分けていただいたのです。まだまだたくさんあるので、「しもつかれ」に挑戦してみようかな?
※ちなみに、大矢孝酒造は基本的に一般見学不可。ご了承ください。