「いしづち」号にのって約2時間30分の道のり。たまたまですが、アンパンマン列車でした。こういうの、あるんですねえ。子供は大喜び…なのかもですが、私が乗ったときはオッサンばっかりでした(笑)。
天井も実にファンシー。
白人のお客さん、写真撮りまくり。検索したら四国内で21種類が走っているそうです。原作者のやなせたかしさん、高知育ちなんですね。
車窓からの瀬戸内海の眺め。
JR高松「みどりの窓口」の係員のかた、「自由席で大丈夫ですかね」と尋ねたら、「日曜ですけど、おひとりでしたらまあ…大丈夫だと思いますよ。向かって右側ですと瀬戸内海が見えます」と親切に教えてくださいました。うれしいなあ。
ありがとうございました。
撮れなかったけれど、野原や田んぼにはレンゲがところどころ咲いていましたよ。
松山駅に到着。暑いぐらいの陽気!
駅構内で端的に示される愛媛名物の3点。
タルト・じゃこ天・坊っちゃん団子。愛媛のタルトについては拙著『にっぽんのおやつ』にも書きましたので、よかったら読んでみてください。
構内のうどん屋さんが妙にうまそうだったな、食べなかったことをちょい後悔。
松山のまちはハナミズキの盛りでした。あちこちに。
愛媛の銘酒『石鎚』の看板を見かけて、「ああ、愛媛に来たんだな…」と思ったり。
市の中心部からのぞむ松山城。こういう景色が日常なんですよねえ。
例によってホテルにチェックイン後、荷物置いて商店街やらウロウロ。とある青果店にありました。蛇口にご注目ください。
自分で「都市伝説」と書いちゃってるのがいいですね(笑)。
ここの青果店で、文旦が安かったので実家に送ったんですよ。そしたらサービスでこのジュース飲ませてくれたんです。ヽ(^o^)丿
キビナゴのおからずし
地下街の出店で発見、キビナゴのおからずし。
ああ、値段失念。350円ぐらいだったかなあ…。
酢めし同様、おからは甘酢で味つけされており、食感はしっとり、パサパサしてないんですよ。キビナゴは酢でしめられています。
これ、宇和島のほうの料理じゃなかったかな。たしか「丸ずし」という名前だったような。販売のおばちゃんに尋ねれば、
こっちでも食べるよ。でも作りはしないけどねえ。売られてることは売られてる。
とのことでした。うーむ。
高知のバージョン
思い出すのが、江戸川橋にある『酢飯屋』さん。以前うかがったとき、おからずしが出てきたんです。
『酢飯屋』さんは、日本の郷土寿司研究にも熱心なお店。ブログにキビナゴずしのことが詳しく書かれていました。リンクを貼っておきますね。
おからに焼きサバや豆乳でコクを加えるんですな。まさに所変われば食変わる。ちなみにご主人の岡田大介さんの著書『季節のおうち寿司』(PHP)にはこの詳しいレシピも載っていますよ。
『酢飯屋』さんでいただいたときの写真です。おから酢めし、絶品でした。
さて、先のキビナゴずしのことをフェイスブックにアップしたら、高知県高知市のかたからこんなコメントが。
高知にもありますよ。魚はウルメイワシの酢漬けで、やはりおからが酢飯代わりです。昔、お米が貴重で食べられない時に考案されたと聞いた事があります『たま寿司』と呼びます。
四国各地でいろんなバリエーションがあるんだろうな。徳島や香川はどうだろうか?
Kさん、ありがとうございました。 m(__)m
「あまぎ」を使った「いずみや」
さて、デパ地下でもおからずしを発見!
松山三越で購入、298円でした。
こちらは「いずみや」という名前が。農水省の「郷土料理百選」サイトによると、
別子銅山の開発に大阪から来た住友家が手法を伝えたもので、住友の屋号「泉屋」から料理の呼称がついたものと伝えられています。
当時は魚の中身がすし飯でしたが、米に恵まれなかった新居浜地方の人々は米の代わりに「おから」を使い、いずみやを作りました。
と、あります。
郷土料理って、同じようなものでも近隣の地域ごとで様々に呼び方が変わるもの。
写真の魚はこちらの言葉で「あまぎ」、調べてみればイボダイのことでした。
酢めし(酢おから?)の味つけ、先のキビナゴとはまったく違う!
さっきのは甘めで、こちらのはさっぱりと淡い…けど、うま味が強いな。作り方質問したいのはやまやまでしたが、お忙しそうだった。また調べます。
ちなみに、愛媛県庁の「八幡浜の特産物を使ったおすすめレシピ」という特集に「あまぎの丸寿司」が載っていたのでメモ。
「あずま」バージョン
社団法人・農山漁村文化協会には「日本の食生活全集」という労作があるのですが、その『聞き書 岡山の食事』を読むと、
「すし飯のかわりに、おからを味をつけて炊き、それをつなしに詰めると、あずまと呼ばれる丸ずしができあがる」
と59ページにあります。
“つなし”とは「五寸ぐらいのコノシロ」のこと。この本では県南部・海側の料理とざっくりカテゴライズされているので、具体的にどのあたりのことなのかはわかりませんでした。ここで思い出されるのが、別の本。
『続 日本・食の歴史地図』(吉川誠次、大堀恭良 共著、生活人新書)の33ページに「あずま」が登場するんです。本著では「あずま」が食べられる地方を岡山~広島の瀬戸内沿岸部、そして愛媛県宇和島周辺と定義。
広島・尾道で「あずま」の作り方を調査されてますが、魚は主にままかり(サッパ)が使われるよう。
おからは「甘酢とショウガのしぼり汁を入れてよく練り、刻みショウガと柚子皮、麻の実を混ぜる」とあります(大意)。麻の実!
しかし、この本の取材時(平成3年~12年)ですでに作る人、食べる人ともに激減していたよう。地元の調理者を探すのに難儀したそうです。
食文化研究家の吉川誠次氏は、この「あずま」のネーミング由来を「文字通り関東、それも江戸から伝わったかららしい」とし、おからのすしは「北は山形県の新庄から、南は五島列島の長崎まで」いたるところで見られる(見られた?)と記しています。
みなさんの地方で「おからずし」って聞いたことありますか?
糖質オフブームの昨今、もっと見直されていいレシピではないかな。流行ることで「掘り起こされる」こともありますからね、郷土料理。
居酒屋『酔笑』
さて、夜は松山在住の友人Kさんとこちらへ。
表のメニューを見て飛び込みで入りましたが、当たりでしたよ。
一杯目から日本酒をいきました。種類が豊富で、写真の3倍ぐらいはあったかな。数があればいいわけじゃないですけどね。しかし日曜にもかかわらず結構な来客数、ご店主もお客さんも酒が大好き…という感じが伝わってきて、なんか安心してオーダーできました。
写真はコイワシ(=カタクチイワシ)の天ぷら。コイワシ、松山市内では「ホータレイワシ」「ホオタレ」「ホウタレ」と書くんですね。『酔笑』さんは「ホータレイワシ」表記だったかな。
一説では「おいしくて頬がたれるからホータレ」とも聞きます。「ほっぺが落ちる」ってな表現、ありますねえ。
松山で採取した別の店のメニューですが、ここにも「ホータレイワシ天」の文字が見えます。コイワシは地域によって名前が千変万化するので、面白いんですよ。
これもまた別の店のメニューですが、右側に「ホータレの天ぷら」とありますね。
久々再会のKさんに四国のよもやま話をたっぷり教えてもらいつつ、日本酒を飲む飲む。このラベル、かわいいですね。福岡・三井郡『みいの寿』という蔵元さんの酒で、「QuadriFoglio」(=四葉のクローバー)という名前。ご主人におまかせで出してもらいましたが、無濾過生原純吟系でまさに好み。うまかったっす!
その後、Kさんの案内で2軒目へ。『フランキー小林』というスタンドバーに連れていってもらい(オーナーがフランキー堺のファンであやかった店名だそう)、さらにいろいろ四国話を聞いたのですが、きょうはここまで。
Kさん、お世話になりました。ありがとう。
一夜明けて、松山城
Kさん推奨コメントに従い、朝は松山城へ。8時半から開場していました。
※時期によって開場時間は変わるようです。
天守へはロープウェイ、リフトの両方法があるのですが、私は高所恐怖症。いつもなら絶対にロープウェイを選ぶのですが、なんかこのとき…魔が差したんですね。
「なんか、いけそう。克服できるかも?」
そう思って乗ったんです。
とんだ間違いでした。
私は高層ビルなどは平気なんですが、「もし自分がミスったら落ちる」的なシチュエーションがダメなんですね。映画や映像なども、同じような状況がまったくもってダメ。ロッククライミングとか1分も見られません。書いていてもう気持悪くなってきました。気持ちがどうにも焦燥と混乱のただなかに追い込まれていくんです。ひいい。
この写真だとそんな高くないんですが、このあと来るんですよ。高いとこが。
手から汗、30デシリットルはかいたと思います。リフトは約6分間。激しい後悔におそわれました。「これ以上考えたらパニックになって飛び降りてしまうかもしれない」と本気で思い、目をつぶってずうっと歌ってました。何歌ったか覚えてませんが、顔はもう蒼白だったと思います。すれちがうロープウェイの人々が見てなかったことを祈ります。
まあそんなことはともかく、登れば素晴らしい眺め。快晴!
(立ち直りは早い)
八重桜と天守閣。
熊蜂が多かったですねえ。咲きそめの藤に惹かれてこんな高いところまで来るのでしょうか。
しばし散歩。
さっきまでの高所恐怖はどこへやら、美景を満喫。
帰りはもちろん、ロープウェイ。
係員さんがね、こういう扮装なのですよ。松山を舞台にした夏目漱石の小説『坊っちゃん』のマドンナをイメージしているそうです。
うーん…せっかくの松山行なんだから『坊っちゃん』読み返してから来るぐらいのこと、すればよかったな。今さら後悔。
帰りのロープウェイから撮った一枚です。
私が恐れおののいた高さというのは…きっと平気な人からしたらなんでもない高さなのかもしれません。でもやっぱりこの写真見てるだけでまた手に汗が…。
(;´д`)トホホ
さて、また町中でメニュー採取。
みかんブリはじめ、瀬戸内らしさがよく出てる一枚ですな。このお店、今度行ってみよう。
道後温泉
ホテルをチェックアウトしてバスに乗り、行ってきましたよ道後温泉。
伊予鉄バスの運転手さん、竹本さんというかたがとても親切で、道のりから周囲の観光地のことまで、あれこれ教えてくれました。感謝です。
道後温泉・横。
道後温泉・真後ろ。
うーん。あまりにも観光地然としていて、正直ちょっとピンと来ず。入浴してみて、地元のかたがリアルに利用している施設なのだな、というのを知れたのはよかったです。
館内には今までの『坊っちゃん』の映像化資料が。
あの俳優さんも、あの役者さんもこの温泉に入ったんだな…と思ったら、急に身近に思えて、うれしくなってきました。映画好きの人は最初にこれを探してから入るといいかも。
番台の女の人…70代かと思うんですが、「映画のロケのときをご存じなんですか?」って訊いてみたんですね。そしたら「あたしはまだ松山に来て7年ぐらいなの」とのこと。失礼しました。
(^-^;
湯上りに『六時屋』さんのいよかんソフト。
いやーっ、最高でした。この日はまた夏日で、ピッタリだったんですねえ。
いよかん含め、愛媛県は言うまでもなく柑橘王国。昨日から青果店を眺めるたび、その種類の多さ、豊富さを思います。ちょっと見栄えが悪いのが安く売られているのもうらやましい。東京のスーパーでは中々こうはいかないですな。
ちなみに六時屋さんは愛媛名物「タルト」で有名なお店。「タルトならここ」と支持する人、多いのですよ。
お約束・ネコスナップ
道後温泉商店街にいたネコ。
もんのすごく人なつっこいヤツでした。
私のカメラの首ひもで遊ぶ遊ぶ。
噛む噛む。
離さない。そろそろ行くよ、ごめんな。
首ひもを取られたときの表情。愛いヤツでした。じゃあね。
さて、そろそろ家に帰ります。さらば瀬戸内海。また会う日まで。
帰りの新幹線の友はタコめし弁当。
おしまい。