白央篤司の独酌ときどき自炊日記Ⅱ

郷土の食、健康と食をテーマに書いています。連絡先→hakuoatushi416@gmail.com 著書に『にっぽんのおにぎり』『にっぽんのおやつ』(理論社)、『ジャパめし。』(集英社)。2016年10月に『にっぽんのおかず』が発売になりました。3部作完結!

お正月の食卓、そして中野翠さんの新刊

 

明けましておめでとうございます。

今年もどうぞ、よろしくお願いいたします。

 

これを書いているのは実は4日の早朝なのですが、きょうから仕事始めのかたも多いでしょうね。私もです。さてさて、まずはお正月の写真メモから。

 

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いつもお世話になっている、大塚の『地酒屋 こだま』さん。おせちは今年初めてお願いしましたが、伝統的な内容を踏襲しつつ、やっぱりなんとも…酒好きの心くすぐる味わいでした。ヽ(^o^)丿

キリッと辛いキンピラごぼう、アナゴ入りの八幡巻、そして田作りが特に好みだったなあ。児玉さん、ごちそうさまでした!

 

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 今年の一本目は奈良県のお酒『篠峯』(しのみね)。こちらも『地酒屋 こだま』さんでセレクト。あ、こだまさんは日本酒専門店で、すべてが試飲可能なお酒屋さんです。興味のあるかたは先のリンクからHPを熟読のうえ、行ってみてくださいね。

この『篠峯』、奈良県は御所(ごせ)市・千代酒造のお酒です。赤磐雄町使用の純米吟醸、無濾過生酒。しっとりなめらかな口当たり、そしてジンワリ…旨いィ。元日・二日とじっくりいただきました。しかし三が日、関東はよく晴れておだやかでしたねえ。ありがたや。 

我が家のお雑煮

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大みそかから元日は、実家に帰省。

母方、新潟は下越地方のお雑煮です。といってもこのスタイルは母の地域だけのよう。たっぷり根野菜の汁にクルミをすって出汁でのばしたものをのせています。コクがあってね、実にうまいんですよ。これがないとお正月が来た気がしません。

具はニンジン、ゴボウ、ダイコン、山菜のワラビ。カツオと昆布の出汁で煮ています。クルミを殻からほじって丹念にするの、昔は子供の役目でした。薄皮取るのがめんどいんですよ。ひょっとしたらあれが、初めての調理手伝いだったかもしれないな。 

 

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写真見にくくて、すみません。ワラビを水に漬けてもどしているところです。春に親が採ってきたもの。こういうの見ると「実家に帰ってきたなあ」と思います。

 

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タッパーいっぱいの松前漬。こちらも実家の暮れのお決まり。

年末に松前漬けを仕込む地域、多いですね。北海道から東北、新潟の各地でディテールを変えつつ、名前も変えつつ、似たようなものが作られています。

この写真をツイッターにアップしたんですが、「あっ、カズノコのっける前に出したの!?」と親に嫌がられました(笑)。ははは、ごめんね。

 

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親の名誉のために、一応(笑)。

分けてもらって、三が日の酒のアテに楽しみました。松前漬け、子供の頃は苦手だったなあ…。なのにこんなに好きになるとは。ちなみにこれは父方・青森八戸(はちのへ)のほうの文化です。

 

【発見】いちご煮の茶碗蒸しがすごくおいしい

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八戸~三陸名物、いちご煮。ウニとアワビのおすましです。といっても実際に作る人は少ないでしょうね。『加久の屋』というメーカーの、この缶詰入りが八戸ではポピュラーなのですが、「これで茶碗蒸しを作るとうまい」と親に教えてもらいました。えっ何それ知らない。

 

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早速作ってみたら、これがおいしい。うん、絶品! クセになるなあ…。もともとアワビとウニの磯の香を楽しむものですが、それが卵によってグッと凝縮される感じ。

<作り方>

先の缶詰1缶に対して、卵3つを溶いて一度漉し、ザルに残るしつこいのは取り除いて、よーく缶詰と混ぜて器に入れます。泡は適宜とりのぞいてから、まず中火で2分、ごく弱火で15分~様子見で20分ぐらい。これだけ!

ハンパに残ったのをココットに移して冷蔵庫に入れておいたんですが、冷やしたのもね、すっごくおいしかったです。マジで。夏に冷菜として出したらいいだろうなあ…。生ウニちょっとのせたりしてね。

ツイッターにあげたら、わりに反響がありました。いちご煮圏の方々かな? 

 

 

暮れの新幹線の友といえば

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年末の「新幹線の友」といえば私はこれ。

コラムニスト・中野翠(なかのみどり)さんの新刊『ぐうらた上等』です。同様のかた、少なからずいるんじゃないかな。年末恒例、週刊誌『サンデー毎日』の連載コラムをまとめたもの。連載は30年を突破したとのこと。すごいッ。

私が中野さんのファンになったのは中学生の頃でした。ちょうど中野さんの単行本デビューと重なるんじゃないかなあ…? 『ウテナさん祝電です』を読んだときに感じた、「なんだこの人!? おもしろい、もっと読みたい!」という強い気持ちは忘れられません。あの灰色の、高校受験だけだった中学時代をなんと楽しく彩ってくれたことか。

ゴダールやらフェリーニといった映画監督、澁澤龍彦深沢七郎といった作家などなど、いろんなことを彼女のコラムから知りました。勝手に恩人と思っています。

そんな彼女が今回は「いつかスーッと業界からフェイドアウトして」なんてことを書いたり、財産整理みたいなことをテーマにしてたり、少々さびしかったなあ。

でも、彼女の持病(中野さんは業病とも書いていたような)「ヒトコト言いたい病」はまだまだ健在なはず。長く長く続けてほしいです。

と、ここで手放し賛美ではなく…私もヒトコト。

中野さんが作中で選んでいた「原節子ベストテン」(P.38)にはうーん…疑問が(笑)。ちょーっとひねりなさすぎません? それは好き好きとしても、原節子関連本について石井妙子さんの『原節子の真実』を「決定版」とされているが、千葉伸夫さんの評伝『原節子 伝説の女優』とセットで私は「決定版」としたい。千葉さんのを「原節子の表面」からの検証、石井さんのを「原節子の裏面、語られざる面、側面」からの検証として対をなすものじゃないだろうか。また男女それぞれから見た原節子評伝と考えても面白い。

なーんて、それはともかく。今年も楽しくおもしろく、時に「えー中野さん、そう観る!?」なんて驚きつつ、拝読しました。 

 

さて、今年も日本の郷土料理健康と食とテーマに、コツコツがんばっていきます。

なにとぞ、よろしくお願いいたします。

白央篤司 拝