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白央篤司の独酌ときどき自炊日記Ⅱ

郷土の食、健康と食をテーマに書いています。連絡先→hakuoatushi416@gmail.com 著書に『にっぽんのおにぎり』『にっぽんのおやつ』(理論社)、『ジャパめし。』(集英社)。2016年10月に『にっぽんのおかず』が発売になりました。3部作完結!

シャルル・リシャール=アムランのピアノリサイタル

劇場・ホール

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ブログにのせるのもどうかというようなシンプルな朝食。

 

さて、23日にオペラシティで開かれたクラシックコンサートのことをきょうは記録しておきますね。去年のショパンコンクールで第2位になったカナダの俊英のリサイタル。

 

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そのひとの名は、シャルル・リシャール=アムラン。

 カナダのモントリオール出身、ショパンコンクールに参加したときで26歳というから、今年27歳だろうか。出生年を公表しない方針らしく、プログラムにも公式サイトにも記載なし。

コンクールの予選をずっと配信動画で追っかけていたのですが、そのときすっかりファンになったのですよ。1位になったチョソンジンを動とするなら、このひとは静。ダイナミズムも兼ね備えつつ、理知的で鷹揚な演奏に惹かれました。

曲目と感想を記録メモ。

5月23日(月)東京オペラシティコンサートホール、19時開演。 

 

ノクターン op.62-1

すばらしいノクターンだった。彼の音楽的特質にとても合った選曲に思う。あの美しく、もの悲しい情趣に満ちたメロディをなんと素敵に奏でたことか。20代後半という若さなのに、かくも人生の秋を感じさせるような哀歓をどうして表現できるのだろう。長いトリルのところはため息がでた。彼のぺダリング能力には専門家筋も舌を巻いていると聞くが、本当に見事な音の響かせ方と消し方で、彼のあらわす音符がきれいに溶けあってはホールの隅々に消えていくあの時間が忘れがたい。

 

しかし、このあとがあまりいただけなかった。「バラード 第3番」いいのだけれど、やや落ち着きに欠けた印象。少し音楽が走ったような…もっともっと悠然とした弾けるひとなのに。続く「幻想ポロネーズ」はまだまだ未消化という感じ。ちょっとこのへんで「疲れてるのかな?」と思ってしまったり。彼の手は小さめのようで、小指をひっかけたり届かなかったりするようなミスもちらほら。別に「小傷のある演奏」はいいのだけれど、集中力が持続できてない感じ。「日本の食べものが合わなかったのだろうか…」などと変に心配してしまった。しかし「序奏とロンド op.16」は絢爛たる技巧を発揮、「あれ。別に体調悪いわけではなさそう」と思い直すも、このリサイタルの前半の骨子となる2曲が魅力的に聞かれないのは残念であった。

 

休憩をはさんで「4つのマズルカ op.33」、音と響きは見事なのだけれど、マズルカに必要な独特の陰翳に欠ける。言い換えるならショパン的アブノーマルな部分が弱いというか…。華やかな3曲目がいちばん良かったが、マズルカらしい舞踊のリズムに欠ける。マズルカって難しいなあ…と改めて思った。

 

最後の「ソナタ 第3番」は充実の演奏。ショパンコンクールでも高く評価され、ベストソナタ賞を受賞している。本当によく研究されて、手の内に入ってるなあと再確認。私は今年の1月のガラ・コンサートでも彼のこの曲の演奏を聴いているが、出来としてはどちらも高水準で、あまり変わらない印象。それだけ習得率の高い曲なのだろう。ぜいたくを言えば第1楽章から続けてすぐに第2楽章にいってほしいのだけれど、ないものねだりしちゃいけませんね。愛おしい人を思い出すかのような抒情に満ちた第3楽章、そしてきらびやかな第4楽章のフィナーレ、堪能しました。

 

アンコールは「英雄ポロネーズ」、こちらも素晴らしかった。万雷の拍手。そして「ショパン以外のものを」と客席に向かって話し、エネスコの「パヴァ―ヌ」という曲を弾いて会は終了となった。また来日の折には聴きに行きたい。これから彼が順調にレパートリーを増やして、良いピアニスト人生をおくれますように。いつか、彼のバッハとドビュッシーを聴いてみたい。