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白央篤司の独酌ときどき自炊日記Ⅱ

郷土の食、健康と食をテーマに書いています。連絡先→hakuoatushi416@gmail.com 著書に『にっぽんのおにぎり』『にっぽんのおやつ』(理論社)、『ジャパめし。』(集英社)。2016年10月に『にっぽんのおかず』が発売になりました。3部作完結!

MIYAKE ISSEY展、そして千葉泰樹監督作品の食メモ

 

花の盛りも過ぎてしまいました。

国立新美術館を訪れましたが、名残の桜がとてもきれいでしたよ。

 

 

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国立新美術館で開催中の、MIYAKE ISSEY展を拝見してきました。

 

唐突ですがイッセイさん、好きだったんですわー。

そのむかーーーし、ちょっと無理して着てました。(^.^;)

本当に、はるか昔。 

 

この日は六本木で取材だったので、

早めに向かって、1時間ばかり堪能してきましたよ。

 

 

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新美術館、ひさしぶりだ。

 

 

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1970年からの作品展示、とってもたのしかったです!

欲をいえば……もっともっと、観たかった。

あの3倍ぐらいイッセイの服で埋めつくしてほしかったですねえ。

そして「これを実際に人間が着てるところ、観たいなあ……」と

思えて思えて、なりませんでした。

でもその人件費考えたら、観覧料何倍になるんだろう…って話ですけれどもね(笑)。

 

やっぱり人が着るためにある服ですから、

「動いたときどんな風に揺れるんだろうなあ」とかいろいろ考えてしまいます。

そして動いたときはもっと美しいんだろうなあ、と思わせる服ばかり。

 

 

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ああ、おもしろかった。去りがたいけれど、仕事に行かねば。

 

とてもうららかな日で、陽気も最高でした。

帰りにミッドタウンの茅乃舎と浅野屋で買いものをして、渋谷へ。

 

 

 

シネマヴェーラ渋谷千葉泰樹監督特集 

 

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渋谷・円山町にある名画座シネマヴェーラに行ってきました。

古い日本映画、それも昭和40年代以前のものが好きで、たまに観に行っています。 

 

 

 

現在は、千葉泰樹監督の特集中。

 千葉監督の最も有名な作品といえば…うーん、なんだろう?

大ヒットしたという意味では加東大介主演の『大番』シリーズでしょうが、

それを実感として分かるのはもう70代以上なのかな。

千葉監督は1985年に亡くなられています。

こういう監督の特集上映をやってくれるヴェーラ、本当にありがたい。

 

 

今回は昭和43年作のお正月映画『春らんまん』と、

昭和32年作の『下町(ダウンタウン)』という2作品を拝見してきました。

 

映画の感想は当然さまざまにあるのですが、

食に関することをちょっとメモしておきます。

 

 

『春らんまん』(1968)における食描写

実際に食べるシーンではないのですが、

主人公の新妻(新珠三千代)が"クッキングスクール"に通うシーンがあります。

 

この新妻は中堅企業の社長夫人。

スクールの様子もなかなかに華やかで、

生徒たちはいずれも富裕層の令嬢や令夫人(どちらも死語ですね)のよう。

そして教えられていたのが「レバーのカレー」でした。

 

黒板に書かれた材料一式が一瞬映るのですが、

その中で添えられるごはんが「ピラフ」だったのが印象的。

 

カレーにピラフを添える。

いまはまずやらないというか、ちょっと重いですね(笑)。

しかも具材のメインがレバーだし。

もちろん詳細なレシピが分からないので絶妙な組み合わせなのかもしれませんが、

ともかくも手の込んだメニューです。

 

クローブなどのスパイス類も書いてあったように思うのですが、

こちらは何しろ一瞬だったので覚えきれず。

当時、この手のスパイスやドライハーブって

どの程度の"入手困難度"だったのでしょう?

紀伊國屋明治屋、そして百貨店などでは買えたと思いますが、

そのほかではどうだったのか…。

 

よい資料をご存じのかた、いらっしゃいましたら

どうぞ教えてください(メール:hakuoatushi416@gmail.com)。

 

さて、シネマヴェーラは二本立て。

次は昭和32年の作品、『下町(ダウンタウン)』です。

 

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この映画は敗戦から4年経った昭和24年、1949年の日本を描いています。

 

 

『下町(ダウンタウン)』(1957)における食描写

 

先ほどの『春らんまん』は昭和43年(1968)お正月公開の作品。

このころは高度経済成長期のピークでしょうか、

国民総生産が世界第2位になった年です。ちなみにこの2年後が、あの大阪万博の年。

 そんな輝かしい時代がまだまだ先の、

昭和24年の日本が『下町(ダウンタウン)』の舞台です。

 

ファーストカットは、舗装もされていない泥の道を歩む

お茶売りの行商女(山田五十鈴)を映し出します。

 

その足の運びににじむ疲労感、ホープレスな風情。

やっぱり山田五十鈴……うまいっ。

足だけの芝居で濃く強く、いろんなものを伝えてくる。 

 

さて、彼女の夫はシベリア抑留の憂き目に遭い、生死も分からぬ状態です。

おさない男の子をかかえて、毎日さほども売れないお茶の行商をして暮らす日々。

この男の子の素朴な演技が実によく、

また三船敏郎演じる男との出逢いと、

その後の展開がなんともいえぬ人生の哀歓を感じさせて、いいドラマでした。

感想を書いているとキリがないのですが、

ここでは食描写のことだけを。

 

母子が寄り添うようにして

お惣菜やさんで揚げものを購入するシーンがあるんです。

店先にはお習字で「コロッケ」「フライ」とだけ書かれた張り紙があり、

たしかそれぞれ、5円でした。

フト思いましたが、杉浦茂描く「コロッケ5えんのすけ」って

この頃の作品だったのでしょうかね。

 

フライは詳細が描かれないのですが、アップを見る限りイワシフライのよう。

三船敏郎がソースをかける描写もあります。

うーん、どこのメーカーでしょう。

ちなみにあのブルドックソース、終戦の年の暮れには

もう営業を再開していたよう。ブルドックかなあ。

 

 

昭和24年の母子家庭を描いた作品に出てくる、5円のコロッケ。

昭和43年のブルジョワ一族を描いた作品に出てくる、ピラフ添えのカレー。

この時間の経過、日本の変容を思わずにはいられませんでした。

 

『下町』で描かれた貧しい母子は、昭和43年にはどんなふうに暮らしていただろう?

男の子は成功しただろうか。

母親は、あい変わらず慎ましく暮らしていたのだろうか……。

 

そんな想像をしつつ、帰りに寄ったスーパーで

むしょうにコロッケが買いたくなりました。

その日の1個の値段は、70円。

昭和24年から67年が経ちましたが、値段は17倍に。

私が小学生だった約30年前、スーパーのコロッケはいくらだったかなあ。

これからはもっと物価の変遷ということにも

注意していきたいと思います。

 

 

 

※追記 

この2作品については、「キネマ写真館」というサイトの解説が

その名のとおり写真もたっぷり、非常に詳しいので

興味のあるかたは下記リンクをご覧になってみてください。

作品詳細「春らんまん」|日本映画写真のキネマ写真館

 

作品詳細「下町」|日本映画写真のキネマ写真館