白央篤司の独酌ときどき自炊日記Ⅱ

フードライター。郷土の食、栄養、暮らしと食をテーマに執筆しています。連絡先→hakuoatushi416@gmail.com 著書に『自炊力』『にっぽんのおにぎり』(理論社)、『ジャパめし。』(集英社)など。メシ通『栄養と料理』『ホットペッパー』などで執筆中。

カレーどき

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「またカレー!?」
 子どもの頃、何度かこんなことを母親に言ったと思う。この年になって、そしてよく料理をするようになって、悪かったなと思った。
 きょうもカレーをつくっている。
 冷蔵庫の「微妙なもの」が増えてきたときが、カレーどきなのである。とにかく入れる。量的に微妙なもの、鮮度的にそろそろ黄色信号になりそうなもの、冷凍庫で随分長居しているもの。何を入れてもカレーはビクともしない。こういう「とにかく入れちゃえ」的なことをしているとき独特の昂揚感というのは、料理をされるかたなら分かるのではないだろうか。
 出来あがって、いただく。カレーの味である。包容力というのは言い換えればカレーである。いくぶんかスッキリした冷蔵庫が、うれしい。あの日の母も同じように、少しはスッキリした気持ちだったんだろうか。
 なんて考えつつ、こないだ冷凍したカレーがまだ1ジップロック(大)冷凍庫にあったのを思い出した(実話)。ちょっと 泣きたい。